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イスラム過激派サッカー好きで広がるテロ組織の輪
南アフリカで開かれたサッカーのワールドカップ(W杯)の観衆に、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンがいたら、さぞ目立っただろう。イスラム教ではギャンブルや飲酒をはじめさまざまな娯楽が禁じられているし、彼がスタジアムに姿を現せば試合観戦ではなく会場爆破のためと思いたくなる。
ところが実はビンラディンは大のサッカー好き。これはイスラム過激派の間では珍しくないことだ。ハマスの指導者イスマイル・ハニヤはパレスチナ自治区ガザのプロ選手だったし、ヒズボラのテレビ局はレバノン・プレミアリーグのチームスポンサーになっている。「彼らはジハード(聖戦)の次にサッカーが好きだ」と、サッカーとテロの関係を研究している人類学者スコット・アトランは言う。
イスラム過激派のサッカー愛に負の側面があるとすれば、テロ組織の新人探しや仲間づくりの手段としてサッカーを使っていること。79年にソ連がアフガニスタンに侵攻して以来、抵抗武装勢力の絆を強めたりテロ組織の基盤を強化する上でサッカーは役立ってきた。
列車爆破テロ犯もサッカー仲間
アルカイダは90年代にスーダンでサッカーリーグを運営していたし、04年にスペインで列車爆破テロを起こした実行犯の大半が一緒にサッカーをしていた。「驚くほど多くのサッカー選手がテロ組織に一緒に加入する」と、アトランは米上院軍事委員会で証言している。パレスチナのあるサッカーチームからは、最低でも10人の自爆テロ実行犯が出ている。
だが、すべてのイスラム教徒がサッカーを愛しているわけではない。教徒を祈りから遠ざけ、一体であるはずのイスラム社会を国境の壁で分断すると、反発するイスラム法学者もいる。今年のW杯にイスラム圏から出場できたのはナイジェリアとアルジェリアだけ。結局は両国とも予選で敗退した。
[2010年7月21日号掲載]