最新記事

英総選挙

クレッグ自民党が英政界をぶっ壊す

2大政党の不人気で支持率を伸ばした自由民主党が、2大政党制と小選挙区制度に終止符を打つ?

2010年4月28日(水)18時38分
アン・アップルボム(ジャーナリスト)

キングメーカー クレッグ旋風で、あり得ないことが起こりそう(写真は4月22日、2度目のテレビ討論を待つ3党首。左からクレッグ、キャメロン、ブラウン) Reuters

 問題:アメリカ政治の新しいうねりとなっている保守派連合ティーパーティーの動きをイギリスに置き換えるとどうなるか。それも名門私立校に学び、オーストリアでスキーのインストラクターをしていたこともある人物に置き換えると?

 答えは、イギリス自由民主党のニック・クレッグ党首になる、だ。

 彼はここ数十年のイギリスにおける、有権者の最大の反乱の恩恵を受けることになりそうだ。

 イギリスの自由民主党は、歴史的にはちっぽけな第3の党にすぎなかった。自由党と社会民主党が合併して自由民主党が誕生したのは80年代末。労働党はマルクス主義に近い考えに固執し、保守党はマーガレット・サッチャー首相そのものっだった時代だ。両党の両極端なイデオロギーの間には大きな空白地帯があり、そこに飛び込んだのが自民党だった。

 その後、自民党は何度か奇妙な転機を迎える。突拍子もない地域的な理念を支持したり、左派と右派の間でふらふらと揺れ動いて、しばしば同党の政治志向だったはずの中道から外れた。

 だがそうした漂流の時代を経て、クレッグはようやく自民党の役割を見つけた。イデオロギーではなく、選択肢を提示するのである。労働党にうんざりしている、かといって保守党には投票したくない、2大政党制には飽き飽きしている。それなら自民党に投票を、というわけだ。

 もちろんクレッグはあからさまにそんなことは言わない。だが5月6日の総選挙を前に行われたイギリス初のテレビ党首討論で、有権者がクレッグのパフォーマンスから読み取ったのはそのメッセージだった。

 テレビ討論は、それ自体が「プチ改革」といえる。これまでイギリスの政治家がアメリカ式の討論を行うことはなかった。彼らは演壇に立ち、選ばれた問題について選ばれた人々の前で議論することを避けてきた。重要な議論は議会で行うと伝統的に決まっていたからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

香港の銀行、不動産不況による信用リスクに直面=ムー

ワールド

中国の複数都市が公共料金値上げ、デフレ圧力緩和も家

ワールド

インドネシア貿易黒字、4月は35.6億ドル 予想上

ワールド

韓国大統領、ウクライナ支援継続表明 平和サミット出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中