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タイ

流血のさなかタクシンはどこに

2010年4月14日(水)15時14分
知久敏之(本誌記者)

お尋ね者 タクシンの肖像を掲げるデモの参加者(4月9日、バンコク) Kim Kyung Hoon-Reuters

タクシン元首相の支持者が総選挙の実施などを求めて3月初めから反政府デモを続けているタイの首都バンコク。軍部隊がデモの強制排除に乗り出して多数の死傷者が出る最悪の事態となった。

 タクシン派の市民団体「反独裁民主統一戦線(UDD)」は、4月に入ってバンコク中心部を占拠。事態を重くみたアピシット首相は、7日に非常事態を宣言した。政府は一貫して強制排除は行わない方針を示していたが、10日の午後になって軍部隊が催涙ガスやゴム弾を使って、デモ拠点の排除を開始した。反発した参加者も投石などで激しく抵抗し、日本人の報道関係者1人を含む多数の死傷者が出たと報じられている。

 デモが長期化するなかで注目を集めているのが、国外で亡命生活を続けるタクシンの動向。大富豪のタクシンは今回の集会を資金面で支援しているとみられ、神経をとがらせる政府はヨーロッパ駐在の外交官にタクシンの居場所を突き止めるよう指示した。当のタクシンは3月30日に支持者に送ったビデオメッセージで「今はロシアに滞在している」ことを伝え、いずれ帰国したい意向も示している。

 しかし犠牲者まで出す事態に発展し始めた現状では、とてもその希望は実現しそうもない。

[2010年4月21日号掲載]

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