最新記事

核問題

イラン制裁議論に加わる中国の皮算用

国連安保理の追加制裁の話し合いに中国が参加する意向を示した。イランの「古い友人」の本音と狙い

2010年4月2日(金)16時26分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

姿勢転換? 中国がイランの追加制裁に前向きと受け取れるメッセージを発信した(今年3月の中国人民政治協商会議に出席した胡錦濤国家主席) Jason Lee-Reuters

 核開発を続けるイランへの追加経済制裁に向けた国連安全保障理事会の話し合いに中国が「参加する」意向を示したことを、欧米外交筋は喜んでいる。だが結果については多くを期待していない。

 安保理での議論の結果は非常に限定されたものになるだろう、イランの主要な貿易相手国で追加制裁に長い間反対してきた中国が許容するのは、イランの神権政治に実際に痛手を与える制裁措置ではなく「政治的ジェスチャー」だ----と、ヨーロッパのある外交官は言う。

 しかし安保理の常任理事国で制裁決議への拒否権を持つ中国が、名ばかりとはいえ追加制裁に合意すれば、国際社会に歩み寄らず野蛮な振る舞いを続けるイランに対して、古くからの盟友も辟易しているという「メッセージ」を送ることができる。

 アメリカのあるベテラン外交官も、イランへの追加制裁の議論に中国が「参加することに合意した」と認める。「中国は決議が避けられないなら、個別の制裁内容を決める議論に加わるほうがいいと判断したはずだ」

「あの組織」への制裁は効果なし?

 この問題に詳しいヨーロッパの別の外交官は、追加制裁としてイランの現政権に関連する「個人と機関」の国際的な金融取引を規制することも検討されるだろう、と示唆する。オバマ政権の外交筋によれば、中でも有力なのはイラン革命防衛隊に関連する個人や部隊、企業などへの新たな金融規制だ。

 アメリカは既に、革命防衛隊の指導層や構成部隊に対して単独で金融制裁を課している。しかし米政府の司法権が及ぶ範囲内で革命防衛隊がほとんど金融活動をしていないので、その効果は限られている。米政府の安全保障関係者は、たとえ国際的な制裁が追加されても革命防衛隊に打撃を与えられるかどうかは疑わしい、という見方を示している。

 フランス政府はもっと厳しい制裁を求めていた、とオバマ政権の外交筋は言う。しかしイランへの武器輸出の制限など、ヨーロッパ諸国が求めるような厳しい制裁に中国など安保理理事国の支持は得られそうにない。

 欧米外交筋によると、石油の探査・生産に関する技術の移転に対する締め付けも追加制裁として議論されそうだ(中国が必ずしも認めるとは限らないが)。

 しかし国連安保理、特に中国がイランへの精製石油の供給を止めさせるようなより強硬な追加制裁に同意する、と期待する欧米の外交官は現状ではほとんどいない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中