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フランス対米関係よりビジネス優先
最近、アメリカとフランスの間に気まずい空気が流れている。2件の大規模な軍事調達をめぐっていざこざが続き、両国関係に波風が立っているのだ。
1つは総額350億ドルという米国防総省の次期空中給油機の調達をめぐる問題だ。3月8日、米ボーイングに有利になるよう米政府が条件を変更したとして、米ノースロップ・グラマンと欧州の航空防衛大手EADSの連合が入札からの撤退を表明した。これを受けてサルコジ仏大統領は、アメリカは「保護主義的」だと非難した。
その一方でサルコジは、ロシアにフランス製のミストラル級強襲揚陸艦を売却する交渉を進めている。これにはアメリカなどNATO諸国が神経をとがらせている。
フランス政府は対米関係よりビジネスを優先しているように見えるが、無理もない。フランスにとって、大口の国際受注に成功するかどうかは死活問題とも言えるほど重要。歴史的に国家との結び付きが強いフランスの世界的大企業が、経済の重要な柱になっているからだ。
こうした企業が契約を取れるよう手助けするのもフランス大統領の役目だ。失敗すれば経済的にはもちろん、政治的にも失点と見なされる。
このところフランスの代表的な企業は連敗続きで、サルコジの支持率も低迷している。中国での高速鉄道の売り込みが思うようにいかず、アラブ首長国連邦のアブダビでの原子力発電所の入札にも敗れた。人気を回復させたいサルコジにとっては、アメリカとの友好関係より自国産業の後押しのほうが大事だ。
実のところ、アメリカの大統領に盾突いたところで、フランス国内でのサルコジの評判には影響しない。支持率を上げるためなら、ホワイトハウスの夕食会でオバマ米大統領とぎくしゃくした会話を交わす羽目になっても、サルコジは我慢するだろう。
[2010年4月 7日号掲載]