最新記事

ロシア

地方選敗北でプーチンに退潮の兆し?

失業や公共料金の値上げが庶民を直撃、数千人規模の反政府集会も

2010年3月24日(水)15時04分
ミリアム・エルダー

 ロシアで絶大な権力を誇るプーチン首相に逆風が吹いているのか。

 この国では非常に珍しいことに、最近各地で数千人規模の反政府集会が開かれている。さらに3月14日の統一地方選は、プーチン率いる与党・統一ロシアにとって予想を大幅に下回る結果となった。

「多くの人々は統一ロシアや強権的な官僚にうんざりしている」と政治アナリストのアレクザンダー・キネフは言う。

 世論のムードは明らかに変わった。腐敗した警察官と役人絡みの不祥事が毎日のように報じられ、不況に苦しむ民衆は怒りを一層募らせている。失業率が高止まりするなか、年明けの公共料金値上げは特に貧困層を直撃している。

 統一ロシアは長いこと地方議会で平均60%の議席を確保し、昨年10月の統一地方選でも圧勝した。だが今回は、事前に各地で大規模な反政府デモが起きていたこともあり、なりふり構わぬ選挙工作を行ったようだ。独立選挙監視組織ゴロスによれば、同党の関係者は有権者にウオツカや金銭を振る舞い、買収を行ったとされる。

与党・統一ロシアは右往左往

 にもかかわらず、統一ロシアが過半数の議席を確保したのは8つの地方議会のうち4つだけ。主だった市の市長選にも敗北した。票の改ざんをしてこの結果だから、実際の得票率はもっと低かっただろうと批判派は言う。

「連中もいくらなんでも半分の票をごまかすことはできない」と、市民連合「連帯」の指導者の1人であるボリス・ネムツォフ元第1副首相は言う。「この国では何年もまともな選挙が行われたことはない。討論も対立候補もなく、あるのは票の改ざんと不正投票のシステムだけ。まったくの茶番だ」

 プーチンの人気は今も高い。政府系調査会社の最新調査によれば、現在も73%の支持率を誇る。その人気に並ぶ政治家も政党も出てきていないのが現実だ。

 それでも統一ロシアは各地のデモや地方選での敗北に動揺している。公共料金の値下げに動きだし、反政府デモの阻止に躍起になっている。

「(統一ロシアは)どうしていいか分からないでいる」と、政治アナリストのキネフは言う。「万事うまくいっていると言いたいようだが、現実は正反対だ」

*グローバル・ポスト特約
GlobalPost.com

[2010年3月31日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英総選挙、野党労働党のリードが18ポイントに拡大=

ビジネス

大和証G、26年度経常益目標2400億円以上 30

ワールド

仏警察、ニューカレドニア主要道路でバリケード撤去

ワールド

マスク氏とインドネシア保健相、保健分野でスターリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中