大間違いのタリバン買収作戦
タリバンの影響力が強い村では、タリバンの流儀と村の習慣が衝突することはまずない。あごひげを長く伸ばす、礼拝の義務を果たす、公共の場では男女を分ける、イスラム法に従う、犯罪には厳罰で対処する──両者は多くの面で価値観を共有している。
特に地方に住むパシュトゥン人の多くは、カルザイ政権と外国軍隊の駐留が続いた8年間は最悪の時期だったと考えている。彼らの見方によれば、タジク、ウズベク、ハザラといったライバル民族はタリバン政権の崩壊で甘い汁を吸ったが、パシュトゥン人の村は役人の権力乱用や汚職、戦争によって苦しめられてきた。
こうした村人の見方のせいもあって、地方でのタリバン人気は欧米の資金援助で実施された世論調査の結果ほど低くはない。タリバンはカルザイ政権と違い、イスラム法に基づく素早い処罰を導入し、村人を犯罪から守る力があることを証明した。
何よりタリバンの指導部は組織の団結力に自信を持っている。タリバンの内部には統一された指揮系統は存在しないが、それでも司令官たちは全員、最高指導者のムハマド・オマル師と今はなき「アフガニスタン・イスラム首長国」のために戦っている。
同志が次々と捕らえられ、投獄され、殺害された時期もタリバンの団結は崩れなかった。だから今になって指揮官や兵士が買収されるわけがないと、有力司令官のナシル師はユサフザイに語った。この自信は他の幹部にも共通する。
大半のタリバン兵は、自分たちは神の意思を実行していると本気で信じている。自爆テロの志願者が次から次へ登場するのも、この宗教的確信の表れだろう。
カルザイはもう終わり?
アメリカはまだ、この点の重要性を十分に理解していないようだ。タリバンが戦っているのは、権力が欲しいからではない。アフガニスタン全土にイスラム法を復活させたいからだ。この目標に妥協の余地はない。
タリバンは名目上、軍閥の1人グルブディン・ヘクマティアルと同盟を結んでいるが、心の中では忌み嫌っている。ヘクマティアルは、自爆テロをイスラムの教義によって正当化できないと語ったことがあり、現在もカルザイとの妥協の可能性に言及しているからだ。
一方、カルザイ政権はもう救いようがない。よき統治と透明性の確保、麻薬取引の取り締まり、自前の治安部隊の構築......。カルザイは欧米のパトロンが喜びそうなフレーズを選んで口にする。
だが過去8年間、カルザイとカルザイが任命した当局者は約束のごく一部さえ実現できなかった。今後1〜2年で目覚ましい成果を挙げるとは考えにくい。
確かにカルザイは好人物で、汚職とは縁がない。だが指導者としての能力や人を見る目には疑問符が付く。前回の選挙でもそうだったが、カルザイはあらゆる人々にあらゆることを約束するが、それが実現されたためしはない。
一方でカルザイ政権の当局者が悪事を理由に解雇されたり、投獄された例は1つもない。役人の背任行為に対する最大の厳罰は、以前よりうまみが少なそうな仕事への配置転換だ。
結局、ロンドンの国際会議は無駄だった。変身したカルザイ、タリバンの買収と和平交渉──今度もアメリカと同盟国は、ありもしない「解決策」を探し求めている。
現時点で交渉に応じるタリバンの指導者は1人もいないようだ。国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)のカイ・エイダ事務総長特別代表は、1月上旬にドバイでタリバンの代表を名乗る複数の人物と会談したと報じられた。この「代表」はメッセージをタリバンの最高評議会に伝えることができるという触れ込みだったが、上層部の許可を得て動いているとは考えにくい。