最新記事

普天間問題

グアムも嘉手納も「失格」な理由とは?

2010年2月5日(金)14時12分
横田 孝(本誌記者)

迷走中 鳩山政権が挙げる普天間の移設先候補はどこも問題あり Kimimasa Mayama-Reuters

 日米間で頭痛のタネになっている米軍普天間飛行場の移設問題。これまで鳩山政権はさまざまな代替案を検討してきたが、アメリカ側が難色を示している。なぜか。

 作戦上や運用上の問題からして、グアムへの移設は論外だ。普天間には主に兵士や武器、物資を運ぶためのヘリや輸送機が駐留しており、戦闘部隊などの移動に欠かせない。グアムだと、海兵隊の機動力が大きく損なわれてしまう。

 沖縄の離島も同じだ。米軍は運用上、移設先の条件を沖縄の海兵隊基地から185キロ以内としているので、約350キロ離れた下地島は対象外となる。さらに同島は台湾の目と鼻の先にあるため、戦略上も好ましくない。沖縄本島から約9キロの位置にある伊江島はこの条件を満たしているが、既に海兵隊の補助飛行場があり、住民はこれ以上の負担を拒否している。

 嘉手納基地はどうか。軍事施設だけでなく、嘉手納には学校やスーパーマーケット、映画館、ゴルフ場まである。ゴルフ場を撤去すれば、普天間のヘリ部隊を受け入れるための面積は確保できる。それでも問題は多い。住民の反対はもちろんだが、事故が起きる可能性が格段に上がってしまう。嘉手納にはF15戦闘機部隊や輸送・給油機部隊などがあり、離発着数が膨大だ。そこにヘリ部隊を移転させれば管制が混乱し、事故が起きるのは目に見えている。

 「ゼロベース」で代替案を5月までに決めるとしている鳩山首相。軍事問題や沖縄の実情を少しでも理解していれば、代替案などすぐに見つからないことくらい、見通せたはずなのだが。

[2010年2月10日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 5
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中