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大統領選

チリに右派政権誕生でも中道に異状なし

右派ピネラの勝利は、左派から穏健中道に向う中南米の大きな流れの一部

2010年1月27日(水)16時35分
マック・マーゴリス(リオデジャネイロ支局)

 チリで1月17日に行われた大統領選の決選投票で、実業家で中道右派のセバスチャン・ピネラ(60)が勝利した。これを中南米の左派勢力が衰退する先駆けとみる意見は多い。確かに、チリで保守勢力が大統領選に勝ったのはこの半世紀で初めてのことだ。

 しかしピネラが右派的な姿勢を強硬に打ち出すことはなさそうだ。むしろピネラの勝利は中南米の新しい政治の流れを体現している。穏健な中道路線へと向かう緩やかな、そして着実な流れだ。

 数年前まで、中南米には左派の風が吹いていた。しかしベネズエラの独裁者チャベス大統領とその同志たちを除けば、ほとんどの国が中道に傾いていった。ブラジルのルラ大統領やペルーのガルシア大統領といった左派の指導者は投資家のご機嫌を伺い、貿易障壁を撤廃するようになった。

 ピネラは多少は右派寄りの姿勢を見せるかもしれないが、右派が議会で過半数を割っている以上、議会との調整が不可欠だ。それにチリを成長に導いた現行の経済政策を転換することもないだろう。市場主義を取り入れつつ社会福祉も充実させるバランスの取れた政策でチリは成功した。この方程式は今や中南米の新しい世代の政治家たちのモデルになっている。

[2010年2月 3日号掲載]

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