最新記事

米大統領

オバマのお辞儀批判は劣等感の表れ

天皇に深々とお辞儀したオバマ大統領を非難する論争はアメリカのイメージを損なうだけ

2009年11月18日(水)16時32分
ケイティ・コノリー(ワシントン支局)

弱さの表れ 外国要人にお辞儀をした米大統領はオバマだけではないのだが(11月14日、皇居にて)  Jim Young-Reuters

 日本を訪れた際に天皇にお辞儀したバラク・オバマ大統領をめぐる論争に加わることに、私は少々ためらいを感じている。この行為に激怒している人々は、オバマの言動すべてに不満を募らせており、この一件をそうした感情のはけ口にしているように思えるからだ。逆に、お辞儀に大した意味はないと考える人々は、オバマを熱心に擁護するほどの関心もなく、肩をすぼめて立ち去っていく。

 私もお辞儀くらいで大騒ぎするなという意見に賛成なので、これまでこの問題には触れなかった。外国要人の前でお辞儀をしたアメリカ大統領は、オバマが初めてではない。ビル・クリントンも明仁天皇にお辞儀したことがあるし、リチャード・ニクソンはその父の裕仁天皇に、ドワイト・アイゼンハワーはシャルル・ドゴール仏大統領にお辞儀をした。

 彼らがお辞儀をしたせいで世界におけるアメリカの立場が劇的に弱まったことなどないし、今回もそんなことにはならない。大統領は礼儀正しさと強大な権力を合わせもてる存在なのだ。

 伝統を尊重しなかったり、善意を示すジェスチャーをないがしろにする姿勢を通してしか、権力を誇示できないというのか。親米国の高齢の天皇にお辞儀をしただけで危機にさらされるほど、世界におけるアメリカの地位は危ういのか。私はそうは思わない。

 アメリカ外交の方向性について議論するのなら、何の異論もない。外国の指導者に敬意を払いすぎる態度は弱さの告白に等しいという批判もあり、そうした議論には意味がある。だが、必要なのはあくまで具体的な決定や政策をめぐる議論であり、象徴的な役割しかもたない天皇への挨拶の仕方をめぐる議論ではない。

 お辞儀をめぐる批判には作為が感じられ、無意味な論争だ。アメリカが実態よりも弱い国という印象を世界に与えるだけだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

実質GDP年率2.9%に下方修正、消費下押し 4─

ビジネス

経常収支7月は3兆1930億円の黒字、第1次所得収

ビジネス

OPECプラス、12月に減産幅縮小開始へ=ゴールド

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、3万6000円割れ 幅広
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元で7ゴール見られてお得」日本に大敗した中国ファンの本音は...
  • 3
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が増加する」農水省とJAの利益優先で国民は置き去りに
  • 4
    メーガン妃が自身の国際的影響力について語る...「単…
  • 5
    ロシア国内の「黒海艦隊」基地を、ウクライナ「水上…
  • 6
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 7
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 8
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 9
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 10
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 1
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 2
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 5
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 6
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 7
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 8
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 9
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 10
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中