トルコにも見放されたイスラエル
ガザ空爆に怒ったトルコがイスラエルとの合同軍事演習を拒否。
占領政策はイスラエルとアメリカの国益を損なう元凶だ
占領の代償 イスラエル軍との合同演習を延期したトルコ空軍(写真) Murad Sezer-Reuters
10月11日、トルコは12,13日に予定されていたアメリカ、イスラエル、トルコ、NATO(北大西洋条約機構)による合同軍事演習を延期すると発表した。
イスラエルによるヨルダン川西岸とガザ地区の占領が、アメリカとイスラエルにとってマイナスではないかという疑問をいだいたことがある人は、今回のトルコの判断に注目すべきだ。両地区を引き続き管理下に置き、二国家共存案を認めないという「大イスラエル」構想が、アメリカとイスラエルの国益を損ねていることを示す最たる例だからだ。
経緯を振り返っておこう。過去10年以上にわたって、トルコはイスラム社会で最もイスラエルと親しい同盟国だった。イスラエルの軍事企業から大量の武器を購入し、イスラエル空軍がトルコ領空で軍事演習を行うことも容認してきた(領空が狭いイスラエルにとってはありがたい話だ)。イスラエルと敵国の仲介役を買って出たこともある。つまり、両国は非常に有益な関係を築いてきたのだ。
ところが、昨年末から今年1月にかけてイスラエルがガザ地区に大規模な空爆を展開すると、トルコ人の怒りが爆発した。裏ルートでイスラエルとシリアやイスラム過激派組織ハマスの交渉を取りもってきたトルコ政府にも、困惑が広がった。
1月に世界経済フォーラム(ダボス会議)で顔を合わせたトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン首相とイスラエルのシモン・ペレス首相は、激しい口論を展開。トルコではこの数カ月間、多国間の合同空軍演習に反対する声が強まっていた。とくに、無力なガザ地区住民を攻撃したイスラエル空軍とトルコ空軍が合同演習を行うことには批判が強かった。
怒ったトルコはシリアに接近
トルコのアフメット・ダブトグル外相は11日、合同演習へのイスラエルの参加を認めないと表明し、原因はガザ攻撃だと明言した。これを受けて、イスラエルの機嫌を伺うアメリカも不参加を表明。NATO諸国も参加を見合わせたため、演習は「延期」された。今後、対立が解消され、日程が再調整される見通しは立っていない。
一方、今週に入ってトルコはシリアと会談を行い、「共通の未来を築く」ための幅広い合意を発表した。イスラエルのハーレツ紙によれば、両国は近い将来、合同の軍事演習も予定しているという。