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民主主義アフガン不正選挙が「正しい」理由
それでもアメリカはカルザイ大統領を支持するのか。不正選 挙疑惑はアフガニスタン政策を見直すいい機会だ
見かけ倒し 投票箱を並べるだけでは意味がない(8月20日、投票にきたカルザイ) Lucy Nicholson-Reuters
8月に行われたアフガニスタンの大統領選挙で現職ハミド・カルザイ大統領の支持者が不正をしたという疑惑に接し、アメリカでは欲求不満と失望が広がっている。何しろカルザイは、戦争で引き裂かれたこの国の民主主義を再生するためアメリカが手ずから選び、指導者に引き上げた男なのだ。
それなのに、アメリカはアフガニスタンに巨費を投じて8年間も戦いを続けている。そればかりか、アフガニスタンに平和が訪れる日(ずっと先だろうが)までに増派する予定の米兵10万人以上の努力と費用を、カルザイの功績にしてやろうとしている。
もっとも、私は投票箱が半分埋まっているとき「半分もある」と考えるタイプ。つまり、楽観論者だ。アメリカ的な価値観を理解せず、アメリカ人の若者が命を捨てて戦っていることに感謝さえしない連中のために戦い続ける意味があるのか、という意見があるのは知っている。だが私に言わせれば、今回の選挙にはプラス面もある。やや無理があるかもしれないが、この選挙結果がもたらす5つのメリットを挙げてみた。
■タリバン支配から抜け出す一歩
偽の投票所が何百カ所も設置され、カルザイの票が多数捏造されたという報道は、アフガニスタンの「進歩」を裏付けるものだ。もちろん疑惑が事実なら、公正な選挙とは言いがたい。だがそれでも、タリバン政権の強権支配に比べれば大きな一歩だし、イランのような近隣の民主主義「先進国」の選挙と比べれば五十歩百歩まできたともいえる。
そればかりか、アフガニスタンの現状は、不正が行われるだろうと予想していた皮肉屋たち(私を含む)をいい気分にしてくれた。
世界経済は不況から脱しそうだし、バラク・オバマ大統領は狂信的な攻撃にも負けず医療保険改革を守ろうとしているし、あまのじゃくな私たちはこのところネタに事欠いていた。だから、アフガニスタンの選挙を成功だとこじつけられば、少しは鬱憤が晴れる。
■本当の友人を見極めるチャンス
汚職、女性差別、アメリカの努力を否定する態度──それでもアメリカはこれまでカルザイを諦めなかった。しかし、今回の選挙で味わった不快感のおかげで、今度こそアフガニスタン指導層の本性に気づくはずだ。
失敗を認めるのは醜態だが、それでもアメリカの政策担当者はアフパック(アフガニスタンとパキスタンを合わせた地域)へのさらなる投資と長期的関与を決める前に、目を見開いて現実を直視しなければならない。
■ふさわしい指導者を探すきっかけに
アフガニスタンは強固な市民社会や社会正義に支えられた国とは言いがたい。それでも、この国のほんのわずかな民主主義(やその失敗による苦い後味)が、自由で公正な統治により熱心な反対派に活力を与えるかも、という希望は持ち続けていい。
今回の選挙には、民主主義への取り組みにふさわしい人物を真剣に探すよう、アメリカや同盟国にはっぱをかける効果もあるかもしれない。そうした人物が見つかったら、資金を渡そう。カルザイがしてきたのと同じくらいアフガニスタンの政治体制をもてあそんでいるように聞こえるだろうが、目的を達成するためなら多少の犠牲はやむをえない場合もある。
■民主主義の国際基準が生まれる
ますます楽観的に言えば、今回の選挙は後ろ暗い政権側が、民主主義という洗剤でうわべだけ身を清めようとした最新例といえる。これを機に、真の民主主義を実現するため法的拘束力のある国際基準をつくろうという動きが世界中で高まるかもしれない。たとえば、選挙のたびに国際的な選挙監視団を送り込めば、国民の利益につながるはずだ。
私もアメリカ人として、できるかぎり選挙の監視をしてほしいと思う。共通の基準をもたなければ、国際社会に対してポーズを取るためにとりあえず投票箱を並べるだけ、という見せかけの民主国家を許してしまう。
中国人やベネズエラ人、ロシア人、イラン人、そしてフロリダ州の住民にはありがたくない話だろうが、だからこそ基準を設ける意味があるというもの。
■オバマの医療保険改革の後押しに
アフガニスタンの選挙結果を前向きに受け止めていい理由を挙げてきたが、納得できない人もいるだろう。そんな人はこの事実を思い出すといい。アメリカは医療保険改革で激しくもめているが、その行く末がどれほど悲惨でも、アフガニスタンやパキスタンほど悲惨な状態にはならないだろう、ということだ。
共和党の必死の反対にもかかわらず、オバマは年内にこの法案を通過させ、重要な改革に着手するだろう。完全なる勝利ではないだろうが、アメリカがアフガニスタンで得られるだろう成果に比べれば、ノルマンディ上陸作戦に匹敵する成功に見える。
Reprinted with permission from David J. Rothkopf's blog, 08/09/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.