最新記事

特報

ドイツ総選挙がテロの標的に?

総選挙を月末に控えたドイツの情報当局にテロ予告が殺到。鉄道爆破テロで政権が覆ったスペインの二の舞は避けられるのか

2009年9月8日(火)16時50分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

不気味な類似点 マドリードで鉄道爆破テロが発生したのは04年3月11日、スペイン総選挙のわずか数日前だった Kai Pfaffenbach-Reuters

 9月27日に総選挙を控えたドイツでこの数週間、情報当局にテロ関連の情報が殺到していることが、ニューズウィークの取材で明らかになった。ただし、情報の信憑性には疑問の余地もあり、総選挙直前のテロを警戒する警察や諜報当局からカネを巻き上げるために、情報源が話をでっち上げたケースもあると当局はみている。

 当局に届くテロ情報には、イスラム聖戦士のビデオメッセージから電話やメールの通信記録、テロ計画の詳細を知っているとする情報源による情報提供までさまざまな形がある。

 欧州のテロ対策担当者(ほかの引用者と同じく微妙な問題のため匿名を希望)によれば、なかでも特に気になるのはビデオメッセージ。ドイツを名指しで脅すビデオの数が急増している点が非常に気がかりだという。

選挙終了後にテロ発生の可能性も

 欧米諸国のテロ対策関係者が懸念するのは、アンゲラ・メルケル首相率いる連立政権の存続がかかった今回のドイツ総選挙を、テロリストが政治的な発言をする格好の場面と考える可能性だ。5年前にスペインの首都マドリードで鉄道爆破テロが発生した当時と現在のドイツの間に、テロリストが類似性を見出しているとしたら危険だ。

 190人以上が死亡し、2000人近い負傷者を出したマドリッドのテロが勃発したのは04年3月11日、総選挙のわずか数日前だった。テロ前の世論調査では保守派のホセ・マリア・アスナール首相がわずかにリードしていたが、テロを境に形勢は逆転。アスナールは再選を阻まれ、社会労働党のホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロが勝利した。

 ドイツでも、メルケル政権への恨みとは関係なく、選挙結果を左右するパワーがあることを誇示したいという単純な理由で、過激派が総選挙直前にテロを実行する可能性がある(ただし、当局がそうした計画の情報を入手しているかどうかは明らかでない)。

 アメリカのテロ対策担当者は、情報の多さから判断して、選挙終了後の数週間にテロが発生する可能性も十分にあると指摘する。また欧州のあるテロ対策担当者によれば、ドイツ当局が入手した情報のなかには選挙前のテロ計画の具体的な日時や場所も含まれており、警察当局は特別の関心を寄せているという。

 もっとも、いったん厳密な捜査を開始すると、そうした情報の多くは間違いだと判明する。テロ情報のタレコミには多額の謝礼が支払われることが多いため、カネ目当ての情報源が話をでっち上げたケースも少なくないと、当局も考えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

海底ケーブル破損、スウェーデンが中国船に調査協力を

ビジネス

トランプ関税表明、政策や空威張りは予想通り トレー

ビジネス

ECBは利下げ継続へ、重点を成長に移している=副総

ビジネス

日産の格付け見通しを「弱含み」に変更、従来「安定的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 9
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 10
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中