最新記事

インタビュー

オバマが選んだ国連外交の顔

単独行動主義から国連重視に転換したアメリカのライス国連大使が語る北朝鮮核開発と分担金未払い問題

2009年8月28日(金)14時46分

北朝鮮への国連制裁決議の取りまとめに奔走したライス国連大使(5月25日) Chip East-Reuters

 03年3月に国連の承認なしにイラク攻撃に踏み切って以来、アメリカの国連に対する姿勢は、「渋々ながらの参加」と「あからさまな敵対」の間で揺れてきた。バラク・オバマ米大統領は内外に姿勢の変化をアピールするために、安全保障とアフリカ問題の専門家スーザン・ライスを国連大使に任命。就任半年を経たライスに、本誌アンドルー・バストが世界の直面する課題を聞いた。

――あなたの就任後、米政府の国連に対する姿勢はどう変わったか。

 意固地な対決姿勢ではなく、参加し、協力して解決策を探ろうという新たなリーダーシップを示そうとしている。他の国々の協力を得ることが往々にして最もわが国の利益にかなうという認識がその土台にある。

――6月12日に安全保障理事会が採択した北朝鮮制裁決議は有効か。

 これは国連が取り得る最も厳しい制裁決議だ。武器輸出による資金流入を断ち、疑わしい船舶の貨物を検査し、これまで以上に多くの企業や個人の資産を凍結する。それによってミサイルと核開発の能力を骨抜きにすることを狙っている。完全に履行されれば、北朝鮮に痛手を与えるはずだ。

――実際、追跡された船舶が北朝鮮に引き返している。

 米軍が他国と共に追跡した不審船が、針路を変えて北朝鮮に戻ったことが確認された。

――国連安保理は、イランの核開発を阻止できるか。

 今はイランの出方待ちだ。4月に常任理事国5カ国にドイツを加えた6カ国で、イランに2つの選択肢を突き付けた。違法な核計画を中止し、国際社会の一員として責任を果たすか、核開発を続け、今後ますます孤立するかだ。

 今もイランの反応を待っているところだが、イタリアで開かれた主要8カ国(G8)首脳会議で再確認されたように、無期限というわけではない。

――潘基文国連事務総長は、平和維持活動の「新しい地平」について語っているが。

 今は世界各地にかつてなく多くの平和維持部隊が派遣されている。約11万5000人がおよそ16の作戦に参加している。米軍が単独で行動する場合と比べ、米政府の負担する費用は12%で済む。アメリカの利益にもかなう。だが、解決すべき課題もある。遂行中の作戦が多過ぎること、スーダンなどのように複雑な要因が絡んで作戦活動が困難な地域が多いことだ。

――経済・軍事大国として台頭してきた中国が、国連で果たす役割は今後どう変わるか。

 中国が10年、20年前と比べて、国連でより積極的かつ多角的な役割を果たしつつあるのは明らかだ。米中の立場が異なることもある。その場合は隔たりを埋める努力をする。北朝鮮の制裁のように、合意点を見いだすことができたときは、大きな進展がもたらされる。

――米政府は未払いの国連分担金をすべて支払ったか。

 分担金支払いを盛り込んだ法案が議会を通過し、大統領が署名したところだ。

――オバマ大統領は、国連は「不可欠であると同時に不完全だ」と語っているが。

 国連は、世界の多くの地域で平和と安全保障に決定的な役割を果たしている。だが欠陥もある。

一部の組織ではマネジメント能力が低く、(フセイン政権下のイラクに食料や医薬品を支援するために行われた)「石油食糧交換計画」であったような汚職もある。

 国連改革はここ数年前進してきたが、今後も大きな課題であり続ける。アメリカは予算や人材を出すからには、重要な優先課題として制度改革に協力すべきだ。

[2009年7月29日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

世界のLNG需要、今後10年で50%増加=豪ウッド

ビジネス

午前の日経平均は続伸、一時初の4万5000円 米ハ

ワールド

EU、気候変動対策の新目標で期限内合意見えず 暫定

ワールド

仏新首相、フィッチの格下げで険しさ増す政策運営 歳
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中