米中G2戦略の落とし穴
戦略主義派はこれに対し、力が増すにつれ中国政府はますます現在のアジアの地域秩序を維持したくなくなる、と警鐘を鳴らしている。
中国の著名な戦略研究家約25人の最近の論文を100本調べているうち、あることを発見した。論文の5つに4つが、アジアにおけるアメリカの力と考えを出し抜くこと、影響力を弱めること、または取って代わることを主張しているのだ。中国にとってリベラルな秩序とは、アメリカがアジア地域で覇権を維持するためのもの。たとえ中国政府が現在の秩序から多大な恩恵を受けてきたとしても、必要な成長を達成したときにはないがしろにする恐れがある。
安全保障でも中国の言いなりに
米政府の戦略主義派は中国の成長を妨げることはできないし、そうしたいとも思っていない。だが彼らは、特にアジアにおいて中国の戦略的な野望を封じ込めなければならないと主張する。
つまりはこういうことだ。アメリカの同盟国である日本、韓国、オーストラリア、タイ、フィリピン、シンガポール、インドネシア、そして台頭しつつあるインドによるアジア地域の秩序に中国を巻き込む。この力を敏感に感じ取っている中国は、アメリカ政府かアジアのいずれかとうまくやっていきたいと思っている。両方、ということはあり得ない。
米中関係を「G2」にするという戦略が危険なのはこのためだ。戦略主義派たちは、高官レベルの対等な対話で安全保障や地域組織といった経済以外の分野について論じれば、米政府は中国の言いなりになりかねない、と恐れている。見返りはほとんどないにもかかわらずだ。
すでにアジアにおけるアメリカの同盟国、実際にはビルマ(ミャンマー)と北朝鮮、カンボジアとラオスを除くアジア地域全体が、中国に対するアメリカの影響力はいとも簡単に吹き飛んでしまうのではないかと恐れている。
機能主義派の主張が有利になるにつれ、隠れた敗者はアジアになる可能性が高まっている。アジア地域のほとんどの国は、現在のアメリカ主導の秩序が平和と安定の継続を保証すると考えている。米政府の機能主義派が好む「G2」的アプローチに飛びつけば、地域の平和と安定を危険にさらしかねない。
残念なことに、経済問題が中心であるかぎり機能主義派の優位は変わらない。ワシントンとアジアの非機能主義派の人々ができることは、中国に対するアメリカの影響力が小さくなりすぎないよう祈ることぐらいだ。
Reprinted with permission from www.ForeignPolicy.com, 03/08/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.