最新記事

アフガニスタン

「カルザイ政権は弱者をむさぼる」

8月の大統領選に挑むガーニ前財務相が訴える、タリバン復権を許した現政権の失政と自身の経済再建プラン

2009年7月31日(金)17時28分

 アフガニスタンのアシュラフ・ガーニ前財務相(60)はハミド・カルザイ大統領を痛烈に批判、8月の大統領選に名乗りを上げている。世界銀行のスタッフも務めたガーニは、カルザイ政権の腐敗に抗議して04年に財務相を辞任。その後何度も復帰を打診されたが、頑として応じなかった。本誌ロン・モローとサミ・ユサフザイが首都カブールで話を聞いた。

――カルザイには現職の強みがある。あなたの主張は国民に届くか。

 もちろんだ。カルザイ政権の陣容を見ると、(イスラム原理主義勢力)タリバンの台頭を許した時代に戻ってしまったようだ。高潔さのかけらもなければ、行政能力もない連中を起用している。

――カルザイが副大統領候補に据えた、北部同盟のカセム・ファヒム元司令官たちのことか。

 カルザイがこうした人物を起用するのは、彼にビジョンと指導力がないからだ。すべてが行き当たりばったりだ。カルザイは232人に閣僚ポストを、949人に知事の職を、1000人に副大臣の地位を約束したと噂されている。 大統領の言葉はもう重みを持たない。選挙に勝つために政府を競売にかけたようなもの。おかげでアフガニスタンは、各国政府の汚職度を示す「腐敗認識指数」ランキングで176位に甘んじている。

――再選後に変わることは期待できないか。

 彼が味方に付けた顔触れを見るとノーだ。彼は04年の大統領選で圧倒的な支持を得たが、選挙 が済むと民意に唾を吐いた。

――カルザイ政権があと5年続けば、この国は破綻国家になる?

 そうだ。カルザイが居座れば、平和も発展も安定も奪われる。

――それで喜ぶのはタリバンか。

 タリバンに大義名分を与えることになる。90年代半ばにまともな国家運営ができず自分たちに追いやられた連中がこぞって返り咲いていると、タリバンは国民に訴えるだろう。官僚の役目は政治家を肥えさせることか、国民に奉仕することなのかと。

――タリバンの脅威は深刻か。

 この国にとって最大の脅威は、弱者をむさぼる現政権だ。タリバンが巻き返したのはなぜか。 正義と経済発展を期待した国民が、裏切られたと感じているからだ。

――ではその「腐敗したシステム」をどう改革するつもりか。

 真っ先に導入するのは市民による行政の査定だ。各州の市民代表を3カ月ごとに集め、地方自治体の実績を評価し、不合格となった知事らを解任する。

――経済を立て直すには?

 10の国家事業を起こす。100万戸の公共住宅の建設、(女性の職も含め)100万人分の雇用創出、少数の財閥による独占を解消するため年に2000人の大富豪を育てる、紛争で障害を負った70万人の国民を支援するなどだ。

 財務省の試算では、昨年の税収8億ドルの70%が、汚職と無駄遣いで失われているという。

――カルザイはタリバンとの交渉に意欲的なようだが。

 欧米向けのパフォーマンスだ。国民は真に受けていない。

――タリバンと交渉の余地は?

 カルザイは(タリバンの最高指導者)オマル師の身の安全を保証すると言ったかと思うと、翌日にはタリバンをテロ組織呼ばわりする。私ならまず政権内で話し合い、一貫したスタンスを決める。

[2009年7月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノボノルディスク、「ウゴービ」の試験で体重減少効果

ビジネス

豪カンタス航空、7月下旬から上海便運休 需要低迷で

ワールド

仏大統領、国内大手銀の他国売却容認、欧州の銀行セク

ワールド

米国務長官がキーウ訪問、ウクライナとの連帯示す
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中