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欧州連合

嫌われブレアがなぜEU大統領?

2009年7月31日(金)17時26分
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局)

 トニー・ブレアは英首相時代にヨーロッパで数多くの敵をつくった。03年には各国の反対を押し切ってアメリカのイラク開戦に加担した。EUを熱く支持すると口で言いながら、実際にはほとんど統合政策に関わらなかった。

 そのブレアがなぜEU大統領の有力候補なのか。EU大統領は、今年秋にアイルランドが2度目の国民投票で「リスボン条約」批准を可決したら新設されるポストだ。

 イギリス政府は既にブレア支持を表明。イタリアも熱心に後押ししているほか、フランスとドイツでさえ受け入れるつもりらしい。

 ブレア人気はヨーロッパが変化している証拠だ。これまでEUの要職は、加盟国が駆け引きした末に選ばれた凡庸な人物が占めてきた。しかしEU大統領はヨーロッパの広報責任者であり調停役でもある。ブレアのようなカリスマ性がないと務まらない。

 ブレアにはほかにも有利な点がある。まずフランス語がしゃべれる。社会主義者ではあっても市場の役割を重視しているので、保守派の反発は買わないだろう。最大の強みは、逆説的だが国籍だ。イギリスの欧州懐疑主義を和らげるには、イギリス人をトップに据える以上の良策はない。

[2009年8月 5日号掲載]

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