最新記事

エアライン

落ちる飛行機に乗らない知恵

2009年7月24日(金)14時52分
ケイティ・ポール(本誌記者)

 7月15日、イラン北西部でカスピアン航空のツポレフ154型機が墜落。乗員・乗客168人全員が死亡する惨事となった。多発する航空機事故から飛行の安全性について学ぶことはないのだろうか。

 航空専門家によると、今回墜落したのは旧ソ連時代の老朽化した機体で、ここ7年の間にイランで3回も墜落している。だが、機体の古さは問題ではないのかもしれない。国際航空運送協会(IATA)の広報担当スティーブ・ロットによると、「機体の製造年月と、事故の発生率には関連性がない」。

 IATAの報告書によると、安全性を決定付けるのは機体の原産国と運航区域だという。報告書は、航空事故の発生率をこの2つに基づいて指数化している。アメリカのボーイングやヨーロッパのエアバス、ブラジルのエンブラエルなどのメーカーが製造した航空機は西洋製として分類。ツポレフのようなメーカーは東洋製と分類されており、そのほとんどが旧ソ連か中国で設計されている。

 この報告書によると、08年の西洋製のジェット機の事故率(機体が回復不能な損傷を負ったケース)は、120万回の飛行につき1回。東洋製になると事故率は跳ね上がり、8万3000回の飛行につき1回になる(ジェット機とプロペラ機を含めた数字)。

 もちろん、この相関関係がすべてを証明するわけではない。運航区域も飛行の安全性により大きな影響を及ぼす。国によって、航空インフラや管制システムに優劣があるからだ。

 ただ、東洋製の機体が運航している地域は航空環境が整備されているとはいえない。アフリカや東南アジア、中南米、中東、旧ソ連の一部における飛行が他の地域に比べて危険なのはそのためだ。

 もっとも、空の旅にそれほど神経質になる必要はない。毎日1回、東洋製の航空機に乗るとしても、平均226年間は事故に遭わないのだから。それでも、「ロシア製」というラベルの貼られた飛行機に乗るのは避けたくなるかもしれないが。

[2009年7月29日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ECB、3会合連続で0.25%利下げ 文言変更で一

ワールド

トランプ氏、ウクライナの対ロ長距離攻撃非難 政策変

ビジネス

ECB理事会、一部が0.50%利下げ提案 米関税を

ワールド

中国、積極財政や金融緩和の方針 トランプ次期米政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式多連装ロケットシステム「BM-21グラート」をHIMARSで撃破の瞬間
  • 2
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 5
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 6
    統合失調症の姉と、姉を自宅に閉じ込めた両親の20年…
  • 7
    プロ投資家の目で見ると...物流の2024年問題の裏で成…
  • 8
    日本から学ばず、デフレ・経済停滞から抜け出せなそ…
  • 9
    ノーベル文学賞受賞ハン・ガン「死者が生きている人を…
  • 10
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 4
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 5
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 6
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 7
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 8
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 9
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 10
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中