最新記事

中南米

北朝鮮に学ぶホンジュラス

軍のクーデターで大統領が追放された小国に全世界が振り回される理由

2009年7月23日(木)14時31分
デービッド・ロスコフ(カーネギー国際平和財団客員研究員)

最高の宣伝 ホンジュラスの狙いは世界の注目を集めること?(写真はミチェレッティ暫定大統領の支持者の集会、7月22日) Edgard Garrido-Reuters

 昨日ランチに出かけた先で、ホンジュラスを担当する米外交官と出くわした。「おかしな状況だ。ホンジュラス政府はアメリカやヒラリー・クリントン、ブラジル、ミチェル・バチェレ(チリ大統領)といった全世界を敵に回しているのに、まるでそれを楽しんでいる。ホンジュラスが今までこんなに注目されたことはない」と、彼は言った。

 ホンジュラスは、「ブチ切れ外交の『孫子』」とも言うべき北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記から小国外交の「第1課」を学んだのかもしれない。すなわち「大国を揺さぶれば揺さぶるほ
ど、利益を得ることができる」。ホンジュラスは大した圧力をかけている訳ではないのに、どこに行っても仰々しく報道カメラがついて来る。

 もし北朝鮮が核兵器を持たず、農業しか産業のない貧しく孤立した独裁国家だったら、おそらくGDP(国内総生産)で同レベルのカメルーンぐらいの知名度しかないだろう(同レベルのキプロスやイエメンは、国際的に腫れ物扱いされることで注目を集めている)。

 いずれにしてもその外交高官は、注目されることに慣れすぎないようホンジュラス政府に忠告したそうだ。ホンジュラスへの関心は既に薄れ始めている。それでもまだ問題があるのは、北朝鮮やパキスタン核開発の父アブドゥル・カディル・カーン博士に電話を1本かけて核兵器を手にすれば、ホンジュラスでも世界第1級の厄介者としての権利と特権を享受することができるからだ。

[米国東部時間2009年07月22日(水)15時18分更新]

Reprinted with permission from David J. Rothkopf's blog, 23/07/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国11月製造業PMI、2カ月連続で50上回る 景

ワールド

焦点:戦闘員数千人失ったヒズボラ、立て直しには膨大

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで6週間ぶり高値、日銀利上

ワールド

ゼレンスキー氏、陸軍司令官を新たに任命 内部改革の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える新型ドローン・システム
  • 3
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 4
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 5
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 6
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 7
    定説「赤身肉は心臓に悪い」は「誤解」、本当の悪者…
  • 8
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 9
    「すぐ消える」という説明を信じて女性が入れた「最…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中