最新記事

アジア

インドの歓迎すべき選挙結果と中国、ビルマ

インドの民主主義は中国への圧力になるし、オバマ政権が「共和党の星」を駐中国大使に指名したのもあっぱれだった。今週目白押しだったアジア関連ニュースとアメリカの関係は

2009年5月19日(火)19時07分
デービッド・ロスコフ(カーネギー国際平和財団客員研究員)

安定成長へ 続投が決まったインドのシン首相(右)と与党・国民会議派のソニア・ガンジー総裁 Adnan Abidi-Reuters

 インド亜大陸にとっては概して良い週だった。インドの総選挙は地政学的にも息を呑む規模のものだったし、マンモハン・シン首相の指導下で世界で最も賢明かつ有能な部類に入る現政権が勝利したことにも勇気づけられる。

 1947年のインド独立後、任期を満了して再選される指導者はシンで2人目の快挙。インドが安定的な成長段階に入ったことを示唆している。この国の将来に賭けようとする投資家にとっては魅了的だし、同盟国としてのインドに依存を強めるアメリカのような国々にとっては励みになる話だ。

 そればかりではない。これほど大規模な民主主義の成功は、巨大で複雑な国家では民主主義は機能しないと主張してきた中国のような国にも強力なメッセージを送ることになるだろう。

 中国に関して言えば、アメリカの駐中国大使の地位は、米国務省のなかでも国務長官に次ぎ2番目に重要な地位。米オバマ政権はこの死活的な人事の決定に長い時間をかけた末、ユタ州のジョン・ハンツマン知事(共和党)を指名した。素晴らしい選択だった。

 米中2カ国の「G2」が、アメリカにとって最重要の国家グループであることが一般的に認識されるようになってから初めての駐中国大使として、ハンツマンは必要な資質や適性のほぼすべてを備えている。

 台湾で宣教師として活動したり駐シンガポール大使を務めたり、地域での経験も豊富だ。連邦政府と州政府の両方で重要ポストを歴任し幅広い政策課題に通じているだけでなく、駐中国大使に求められるハードルは極めて高いというメッセージを中国に送ることもできる。

 ハンツマンは中国語も話す。ビル・クリントン元大統領ともバラク・オバマ大統領とも親しくない、とあら探しをする向きもあろうが、それは小さな問題だ。

 私はハンツマンに2度会ったことがある。そのうち1度は、夕食の席で長時間話をすることができた。もう昔のことではあるが、私は彼の知性と気さくさ、政治的才能に感銘を受けた。彼が共和党の潜在的大統領候補と見られていることは、中国では好感されるだろうし、最高責任者オバマの自信を示すことにもなる。

 ハンツマンの過去の後援者の一人、ジョージ・ブッシュ元大統領(ジョージ・W・ブッシュ前大統領の父)とも興味深い類似点がある。ブッシュも要職を歴任し、海外経験が豊富で、確固たる中道派として高く評価されていた。共和党の星ハンツマンは、大統領になる前のブッシュに酷似している。

 ビルマ(ミャンマー)では、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーが国家防御法違反罪で起訴された。アメリカは、彼女の自由を勝ち取るために国際協調を主導し、もっと目に見える抗議運動を展開すべきだ。もしビルマの近隣諸国がこの問題を避けて通ろうとするなら、世界の他の国々が立ち上がって、このおぞましい体制に圧力をかけるしかない。

Reprinted with permission from David J. Rothkopf's blog [19/05/2009].
© by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英首相、移民流入を制度改革で削減すると表明

ワールド

米民主党議員5人の自宅に爆破予告、爆発物は見つから

ビジネス

中国の銅スクラップ輸入減へ、対米貿易懸念の高まりで

ビジネス

再送小売業販売額10月は前年比1.6%上昇、自動車
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖値改善の可能性も【最新研究】
  • 2
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 5
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 8
    トランプを勝たせたアメリカは馬鹿でも人種差別主義…
  • 9
    日本を標的にする「サイバー攻撃者」ランキング 2位…
  • 10
    NewJeansはNewJeansじゃなくなる? 5人と生みの親ミ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中