最新記事

米人種問題

チャールストンにはためく南北戦争の亡霊

黒人襲撃事件を機に、南軍旗をボイコットする動きが全米に広がっているが

2015年6月24日(水)14時00分

象徴 意味合いは白人と黒人とでまったく異なる Jason Miczek-REUTERS

 伝統のある黒人教会で、黒人信者9人を射殺したとして白人至上主義の男が逮捕されたサウスカロライナ州チャールストン。

 ヘイリー州知事は今週、州議会議事堂脇に掲揚している南軍旗(コンフェデレート・フラッグ)の撤去を議会に求めた。

 南軍旗は、150年前の南北戦争で、奴隷解放を訴えたリンカーン大統領の北軍に対抗した南部諸州が使った旗。南部の白人にとってはアイデンティティーの一部だが、黒人にとっては奴隷制度の象徴だ。

 ディラン・ルーフ容疑者(21)は犯行時、アパルトヘイト(人種隔離)国家だった南アフリカとローデシアの国旗を胸に付けており、車のナンバープレートには南軍旗を付けていた。彼にとっては南軍旗が白人優位の象徴だったことは明らかだ。

 事件後は、南軍旗をナチスの鉤十字になぞらえる声もあり、アマゾン・ドットコムやウォルマートなどの小売り大手も、続々と旗とその関連商品の販売中止を発表。ボイコットの動きが広がっている。

 だがチャールストンに残る黒人差別は旗だけではない。トーク番組ホストのジョン・スチュワートは今では全米で有名になったモノローグで、「サウスカロライナでは、黒人が車で走る道に南軍の将軍たちの名前が付いている。彼らは黒人には自由に道路を使わせまいとして戦った将軍たちだ」と、人々が見て見ぬふりをしてきた差別に警鐘を鳴らした。


 州議会ではこれから南軍旗を撤去するかどうかの議論が始まるが、保守派議員の強い抵抗が予想されるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中