最新記事

米外交

元祖弱腰大統領カーターがオバマ外交を大批判

ISISの勢力拡大を許したのはオバマの弱腰のせいと、カーター元米大統領が批判

2014年10月16日(木)13時31分
ハワード・コプロウィッツ

似た者同士 自らも弱腰外交で知られたカーター。右はパネッタ前国防長官 Eric Thayer-Reuters (left), Eric Vidal-Reuters

 カーター元米大統領が、イスラム教スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)への対応をめぐり、オバマ大統領を批判している。オバマの対応の遅れが、ISISの勢力拡大を許したというのだ。

 皮肉にもカーターといえば、大統領退任後こそ平和活動で高い評価を得ているが、在任中は弱腰外交を徹底的に批判された人物。特にイランで起きたアメリカ大使館人質事件は、解決まで400日以上を要し、カーターは対応の遅さを非難された結果、1期で大統領の座を失った。

 そんなカーターが見ても、オバマの煮え切らない外交はイライラするらしい。「アメリカは様子見の期間が長過ぎた。ISISはシリアにいる間に、資金力、戦闘能力、武力を蓄えることができた」と、フォートワース・スター・テレグラム紙に語っている。

 カーターは、無人機を使ったアメリカ人テロリストの殺害についても、「司法の裁きを受けさせるべきだった」と異論を唱えた。カーターが問題視しているのは、アメリカ生まれだが、イエメンのアルカイダ系武装勢力の幹部となったアンワル・アル・アウラキらの殺害だ。

「アメリカの無人機が過去数年で在外アメリカ人4人を殺した。私に言わせれば、わが国の憲法と人権に反している」

 カーターは、オバマの消極的な中東政策全般にも不満のようだ。「状況は刻々と変わっている」とカーターは指摘する。「オバマ政権で国防長官を務めた人物が、退任後に次々と、大統領には断固たる行動力がないと強く批判している」

 パネッタ前国防長官はその1人だ。パネッタは回顧録で、イラク駐留米軍の規模を拡大するべきだとオバマに進言したが、聞き入れられなかったと記している。十分な兵力を配置しなければ、イラクはますます不安定化すると、パネッタは考えていたという。

「イラクではアルカイダが再び勢力を拡大し、スンニ派とシーア派の衝突も悪化している。米軍の規模の小ささは、こうした状況に自分たちで対処しろとイラク軍を突き放したようなものだと、私は今も思っている」と、パネッタは書いている。

「ホワイトハウスはアメリカの影響力や国益を守るよりも、とにかくイラクから手を引きたがっているという印象を、イラクの味方に与えてしまった」

[2014年10月21日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独社民党、保守連合との連立承認 5月にメルツ政権発

ビジネス

村田製、今期は21%営業減益予想 米関税の需要影響

ビジネス

フジHDの25年3月期、一転最終赤字に 金光社長は

ビジネス

三菱UFJ、25年3月期純利益を上方修正 期末配当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中