最新記事

アメリカ社会

米政府のサイバー責任者はコンピューター音痴

テクノロジーの知識より幅広い知識のほうが重要と言うサイバーセキュリティー責任者の勘違い

2014年8月26日(火)16時24分
リリー・ヘイ・ニューマン

安全保障の危機 調整官は最先端のサイバー攻撃にも立ち向かう重要な任務 Bigstock

 たとえその分野で高いスキルを持たなくても、面接の場で多少のはったりをかけるのはよくあること。だが、その仕事が米政府の「サイバーセキュリティー調整官」だとしたら、はったりなどかけるべきではない。それでもマイケル・ダニエルは、うまくすり抜けてきたようだ。

 情報セキュリティーなどを専門にするオンラインメディアのゴブインフォセキュリティーのインタビューで、ダニエルはプリンストン大学とハーバード大学で取得した公共政策の学位や、17年間にわたる米行政予算管理局での経験が、今の自分の仕事に非常に役立っていると力説した。おそらく彼は、政策や連邦予算といった分野に精通していることだろう。

 だがダニエルは、こうも言った。「ごく根本的な部分で、サイバーセキュリティーはテクノロジーだけの問題ではないと思う」。つまり、サイバーセキュリティーにテクノロジーの専門知識は大して必要ない、そのほかの幅広い知識の方が重要だ、ということらしい。

 最初にダニエルのインタビューに関する記事を報じたオンラインメディアのヴォックスに、コンピューター科学の専門家でプリンストン大学教授のエドワード・フェルトンはこう語っている。弁護士や公衆衛生局長官、経済顧問などの職に、専門の訓練とその分野の幅広い知識、新たな研究を分析する能力などが求められることを考えれば、ダニエルがサイバーセキュリティー調整官という自分の任務に関して、技術的な専門知識は必要ないと考えているのはおかしな話だ。

 一方、ダニエルの言い分はこうだ。「この分野で成功するためには、テクノロジーに特化した専門知識を持つよりむしろゼネラリストになる必要がある」。――これはあまり合理的ではなさそうだ。

 ダニエルの前任であるハワード・シュミットもコンピューター科学の専門家ではなかった、というのは言い訳にならない。シュミットは9・11同時多発テロ後の2年間、米政府のサイバーセキュリティー対策責任者を務め、03〜09年にネットオークション大手のeベイに移った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、ホンダとの統合協議を白紙に 取締役会が方針確

ワールド

「ガザ所有」のトランプ発言、国際社会が反発 中東の

ビジネス

EU、Temu・SHEINに販売責任 安価で危険な

ビジネス

独プラント・設備受注、昨年8%減 2年連続のマイナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 2
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 5
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 6
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 7
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 8
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 9
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 10
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中