反ワクチン運動の危険な展開
新生児に必要なビタミンK投与を拒否する親も出てきたが、赤ちゃんに深刻なダメージをもたらしかねない
子供を守る 狂信的なワクチン敵視で犠牲になるのは—— Bigstock
予防接種を拒否する反ワクチン運動が、たちの悪い展開をみせている。信じられないことだが、クリス・ムーニーが米評論誌マザー・ジョーンズに書いた記事によれば、分別のない親たちが子供への予防接種だけでなくビタミンKの接種まで拒否し始めているという。ビタミンKの投与は、新生児に対する標準的なケアとして60年代から行われてきたものだ。
そのため、乳児ビタミンK欠乏性出血症にかかった赤ちゃんを連れて、救急外来にかかる親たちが出てきているという。「珍しい疾患だが、血液凝固作用のあるビタミンKが赤ちゃんの体内に十分にないため起こる」と、ムーニーは書く。「乳児ビタミンK欠乏性出血症にかかると体のさまざまな部分で出血しやすくなり、頭蓋内出血が起こることもある」。頭蓋内出血は脳損傷を引き起こす可能性があり、場合によっては死に至る。
この問題が注目されたのは今年5月、トム・ウィレモンがテネシアン紙に書いた記事がきっかけだ。記事によれば、わずか8カ月間で7人の赤ちゃん(生後7週〜20週)が、乳児ビタミンK欠乏性出血症で米バンダービルト大学のモンロー・カレルJr.子供病院に入院した。新生児10万人に1人以下という珍しい疾患だが、出生時にビタミンKを注射することを拒否する親のせいで今後は増えていくかもしれない、と医師たちは考えている。
マークとメリッサのノトビツ夫妻がいい例だろう。白血病の原因になると聞いたため、彼らは双子の赤ちゃんにビタミンK注射を受けさせなかった。ウィレモンの記事によれば、「ワクチンの防腐剤と白血病に相関関係があるとした古い研究はある。しかしバンダービルトの医師らによれば、複数の追跡研究でその説は誤りだと証明されている」。