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戦闘服米軍の迷彩ファッション戦争
かつては「森林用」と「砂漠用」の2種類だった戦闘服が、陸海空軍や海兵隊の開発競争で今や10種類?
身を潜めて タリバンの攻撃に備える米兵(アフガニスタン)。迷彩服が生死を分けるのは確かだが Goran Tomasevic-Reuters
米軍がクロゼットの大掃除を迫られそうだ。ここ10年ほど米軍は、組織ごとに戦闘服の迷彩柄を増やしてきた。だが、議会の我慢が限界に達したようだ。下院は先頃、迷彩柄を18年10月までに軍全体で統一するよう求める措置を承認し、上院軍事委員会も同様の規定を承認した。
ウィリアム・エンヤート下院議員(民主党)がこの提案を思い立ったきっかけは、微妙な違いしかない戦闘服のデザインに、各軍が相当の予算を使っていることを報じたワシントン・ポスト紙の記事だった。実際、02年に米軍の迷彩柄は「森林用」と「砂漠用」の2種類だったが、今は10種類もある。
「デザイン戦争」に火を付けたのは海兵隊だった。31万9000ドルを投じて森林用と砂漠用のデジタル迷彩を開発し、02年に発表した。クールなデジタル迷彩は他の組織も羨むものだったが、使うことはできなかった。海兵隊がまねされるのを防ぐために、ワシと地球といかりを合わせた海兵隊のエンブレムを組み込んでいたからだ。
それならばと、陸軍は320万ドルを投じ、独自の迷彩をデザインした。05年に発表されたデジタル迷彩は、森林でも砂漠でも機能するはずだった。だが戦闘が続いていたアフガニスタンの風景の中では迷彩として機能しないことが分かり、デザインし直すことに。こうして10年に、少し古風な感じのする「マルチカム」という迷彩を開発した。
一方、空軍はグレーとブルーをあしらった「タイガーストライプ」に320万ドルを投入。しかし、これもアフガニスタンで役に立たなかったため、陸軍のマルチカムを採用した。海軍はグレーとブルーなど数種類の迷彩を制作。戦艦コンスティテューションのエンブレムを入れたのに、海兵隊からデザインが酷似していると文句を言われた。
迷彩柄の統一について、軍内の意見は分かれている。レイ・メイバス海軍長官は、いま海軍が使っている青い迷彩は効果的でなく、「あの素晴らしい迷彩を着ていたら、海に落ちた兵士がいても分からない」として、デザインの統一に賛成の意向を示した。
競争を仕掛けた海兵隊は不満顔だ。「あの迷彩は海兵隊のアイデンティティーだ」と、マイケル・バレット特務曹長は文書で声明を発表した。「海兵隊はどこでも人々の安全を保障する。だから邪魔をしないでほしい」
[2013年7月16日号掲載]