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人権問題同性婚論争は新たな公民権運動
今ではアメリカ人の57%は家族か友人に同性愛者がいて、その結婚の是非も身近な問題になった
法の下の平等を 米最高裁の前に陣取る同性婚賛成派 Joshua Roberts-Reuters
同性愛者同士の結婚を認めるべきか。アメリカでは今、同性婚の是非をめぐる国民的な議論がヤマ場を迎えている。
きっかけは先週、最高裁が「結婚は男女間に限る」と定義した2つの法の合憲性について審理を開始したこと。2つの法とは、96年に制定された連邦法「結婚防衛法」と、08年にカリフォルニア州で成立した州憲法同性婚禁止条項だ。9人の最高裁判事が結婚の定義について保守対リベラルで激論を交わす様子が録音の形で公開され、その「結婚観」に全米が注目した。
アメリカでは現在、首都ワシントンと9つの州が同性婚を認めている。だが連邦法である結婚防衛法は、これらの州の同性婚者にも社会保障や配偶者税控除などで異性婚者と同じ権利を認めていない。10年に同性婚の家庭は全米で約65万世帯に上ったが、彼らにとって結婚とそれに付随する権利は異性愛者だけに認められた「特権」そのもの。最高裁審理は、公民権運動のように「法の下の平等」を勝ち取る戦いにほかならない。
一方で宗教右派など反対者にとって、結婚は大昔から生殖を前提とした男女間でのみ成り立つものであり、法が定義し直せるものではない。そもそも性革命以前のアメリカでは、厳格な性道徳と伝統的な家族の形を重視する宗教観が根強かった。保守派にとって同性婚は「家族崩壊」を加速する脅威に映る。
それでも、多くのアメリカ人にとって同性婚の是非は今や宗教や政治以前に、家族や友人の身近な問題になっている。CNNの調査によれば、「家族や親しい友人に同性愛者がいる人」は57%に上る。
最近は共和党保守派のロブ・ポートマン上院議員が、息子から同性愛を告白されたことを理由に長年の同性婚反対を覆して支持を表明。同性婚反対派が96年の68%から昨年は46%にまで激減し、支持は53%に上ったのも、アメリカ人にとって今やゲイやレズビアンはごく身近な存在だからだろう。
最高裁はこうした社会の動きを反映して、同性婚を認めるのか。先週は過半数の判事が同性婚禁止を疑問視する見方を示した。ただ世論を二分する問題だけに、6月の判決では司法判断を回避する可能性もある。
いずれにせよ、全米が同性婚論争の行方を見守るのは、この問題が「21世紀の公民権運動」と位置付けられているからだ。
[2013年4月 9日号掲載]