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米赤字削減共和党の財政再建案に隠された階級戦争
共和党の元副大統領候補ライアンの財政再建案は金持ち優遇の格差拡大策
福祉切り捨て ポール・ライアンの財政均衡策で負担が増えるのは中・低所得層 Fahad Shadeed-Reuters
共和党の副大統領候補だったポール・ライアン下院予算委員長は、ウォールストリート・ジャーナル紙に論説を寄せ、「財政均衡のために重要なのは実行であって、手段の是非ではない」と訴えている。「手段は問わない」と政治家が言うときほど、「手段」に何が隠れているか注意するべきだろう。
ライアンの財政再建案もまさにそうだ。そのまま実行に移せば財政は均衡するだろう。だがそれは、少数の金持ちの利益を守るために中・低得階層を狙い撃ちにする彼一流のやり方を通じてだ。
共和党の財政赤字削減案らしく、ライアンの案もまず大減税ありきだ。彼は今の累進税制を10%と25%という2段階の税率に変えようとしている。40万ドル以上の所得があり39.6%の所得税を払っている人には大減税になるが、所得が7万ドルで税率がぎりぎり25%の範囲に留まっている人には増税になる可能性が高い。
ライアンはミット・ロムニーとともに大統領選挙を戦ったときにも金持ち減税を提案した。だが今回は金持ち減税とは言う代わりに漠然とした税制改革を隠れ蓑にすることで、高所得者への大減税を可能にしようとしている。
この財政再建案の詳細はまだ不明で、正確な結果は予測しがたい。しかし2012年のブルッキングズ研究所のサミュエル・ブラウン、ウィリアム・ゲール、アダム・ルーニーは、ロムニーとライアンの税制改革は年間所得10万ドル以下のほとんどの世帯で増税になると報告した。ライアンの新たな改革案についてもいずれシンクタンクが検証するだろう。
富裕層や高所得者への減税、中間層への増税以外に、貧困層への福祉の削減も予想される。メディケイド(低所得者医療保険制度)の拡大なんて夢のまた夢。医療保険法では、連邦政府が定めた貧困ラインの4倍(個人所得4万5960ドル、3人の世帯所得で7万8120ドル)未満の所得しかない人も医療保険に加入できるよう、所得に応じた補助金を出している。だがライアンの案が通ればこの補助金も廃止されるだろう。
ライアンは「メディケイドについては州に裁量を委ねる」と言うが、つまりこれはメディケイドの受給資格を無効にする裁量を州に与えることを意味する。「住民ごとの必要性に対応するため、州にフードスタンプ(食糧配給)制度に対する裁量を与える」とも言うが、これもつまり州に給付削減の裁量を与えるということだ奨学金も削減されるだろう。
長い目で見れば、メディケイドなどの支出抑制は重要な問題だ。だが10年以内にそれをやるということは、財政均衡の名の下に、富裕層の税金を減らして、中所得層に増税し、労働者層や貧困層向けの福祉も減らすことに他ならない。今後長期に渡って格差を今より拡大しようとする案だからこそ、ライアンは「手段」について話したがらないのだ。
© 2013, Slate