最新記事

アメリカ社会

もっとオープンになるオバマのアメリカ

政権2期目の目玉として、オバマは不法滞在者1100万人に市民権を与えるなどの改革案を打ち出した

2013年1月30日(水)17時55分

移民の国 大事なのは血縁でも出生地でもなくアメリカへの忠誠心だ、とオバマは語った Jason Reed-Reuters

 1月29日、ネバダ州ラスベガスのデルソル高校に意外な人物がやって来た。バラク・オバマ米大統領だ。

 不法移民問題を政権2期目の重要課題として掲げるオバマはこの日、自らの包括的な移民制度改革案を発表する演説会場として、ヒスパニック系の生徒が半数以上を占めるデルソル高校を選んだ。

「アメリカは移民の国だ」と、大統領は聴衆に向かって語りかけた。「今こそ常識的で包括的な移民制度改革に取り組むべきだ」

 この前日には、共和党のジョン・マケイン上院議員や民主党のチャック・シューマー上院議員ら超党派の有力議員たちが、包括的な移民法案の骨子で合意。オバマはこれを示唆しつつ、「長い年月を経て初めて、共和党と民主党がこの問題に一緒に取り組む気になったらしい」と期待を示した。

「アメリカ人の条件」を問い直す

 しかし同時に、「とりとめのない論争のせいで、移民制度改革が滞ることは許されない」とけん制。意見対立が再燃して議会の調整がなかなかつかない事態となれば、自分の提案内容で法案成立を主導すると、強い姿勢を示した。すると、会場からは歓声が沸き上がった。

 今回の改革案で、オバマは三つの大きな柱を打ち出した。1つ目は、国境警備や違法な就労の取り締まりの強化。2つ目は、1100万人に上る不法滞在者に市民権の付与を認める道を開き、具体的な申請の条件やプロセスを定めること。そして3つ目は、市民権を取得した住民が国外の家族を呼び寄せたり、外国人学生が卒業後にそのままアメリカで事業を始めたりしやすくなるよう、制度を改革することだ。

「この問題に力を入れるほど、感情的な論争が高まるだろう」とオバマは語った。「アメリカ国民である『我々』と、移民である『彼ら』。そんな感覚で議論が広がりがちだ。かつては『我々』も『彼ら』だったことは簡単に忘れてしまう。先住民でない限り、誰もがどこかからやって来たのに」

 そして、こう訴えた。「アメリカ人の条件は血縁や出生地だけじゃない。国の基盤となる原則に忠実であることだ。これは単なる政策の議論ではなく、人間に関する議論なのだ」

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中