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米政治「まともなレイプ」発言にパニクる共和党
レイプではめったに妊娠しない──共和党有力議員の盲言で女性票にさようなら?
論争の的 最高裁の前で開かれた中絶反対を訴える10万人規模のデモ Kevin Lamarque-Reuters
人工妊娠中絶の是非は、アメリカ世論を二分する厄介な火種。キリスト教的倫理観を重んじる共和党陣営には中絶反対派が多く、女性の健康や選択の権利を重視する民主党陣営には中絶容認派が多い。
オバマ大統領の再選をかけた大統領選が11月に迫るなか、ここにきて中絶問題がにわかにクローズアップされている。きっかけは、「女性はレイプされても妊娠しない」という共和党の有力議員の発言。対応を誤れば、共和党が積み上げてきた女性票が一気に消える可能性もある。
問題の発言をしたのは、あらゆる中絶を「例外なく」禁じるべきだと主張している保守派のトッド・エイキン下院議員(共和党、ミズーリ州選出)。8月19日に行われたKTVIテレビのインタビューで、レイプで妊娠した場合でさえ中絶を認めない理由について質問されると、女性の生殖器系には望まぬ妊娠を防ぐ機能があり、レイプされて妊娠するケースは「非常にまれ」だとほのめかした。
「まともなレイプであれば、女性の体は拒絶反応を起こす(ため妊娠しない)。その仕組みがうまく機能しなかった場合には、懲罰が必要だ。だがその場合でも、罰せられるべきはレイプ犯であって胎児ではない」
この発言に科学的な根拠があるとは言い難い。米産婦人科学会誌の96年の研究によれば、レイプによる妊娠は毎年、推定3万2101件。12〜45歳のレイプ被害者が妊娠する割合は5%に上る。
本人も共和党も火消しに躍起
当然、エイキンの発言に対しては民主党陣営ばかりか、共和党内からも激しい批判が噴出。エイキンは発言を撤回し、「レイプや暴行の被害女性たちに私が抱いている深い同情の念を反映した発言ではなかった」と謝罪した。ただし、だからといって「別の罪のない被害者(である胎児)に危害を加えるのは間違いだ」と語り、中絶反対の姿勢は変わらないと強調した。
エイキンはミズーリ州で下院議員から上院議員への鞍替えをもくろんでおり、これまで支持率で現職の上院議員クレア・マカスキル(民主党)をリードしてきた。だが今回の一件で形勢は一転。マカスキルは「女性として、また何百件ものレイプ事件を担当した元検事として、今朝のエイキンの発言には呆然とした」とツイートした。
連邦上院での過半数奪回を狙う共和党としては、重要な鍵を握る選挙区であるミズーリ州で中絶問題が焦点になるのは避けたいところ。党を挙げてエイキンに上院への鞍替え出馬を辞退するよう働きかけているが、エイキンは今のところ応じていない。
エイキン発言の火の粉は、11月の大統領選にも及ぶ可能性がある。共和党の大統領候補ミット・ロムニーがエイキンと「同類」だというイメージが広がれば、女性有権者の支持を一気に失いかねない。
ロムニーはエイキンに出馬辞退を求め、「中絶には反対だが、レイプ被害時の妊娠中絶には賛成」との見解を即座に表明した。
それでも「まともなレイプ」問題が蒸し返されるたびに、オバマへの攻撃が鈍るのは避けられないだろう。
From GlobalPost.com特約