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米大統領選同性婚を支持したオバマの大勝負
国論を二分する同性婚で立場を鮮明にしたことは大統領選で吉と出るか凶と出るか
米大統領で初 テレビで「カミングアウト」したオバマ(5月9日) Stephen Lam-Reuters
アメリカ史上初の黒人大統領は、同性婚を公に支持した初の大統領にもなった。オバマ大統領は先週、ABCテレビのインタビューでこう語った。「同性カップルも結婚できるべきだと思う。私が思い切ってこの考えを表明することは、個人的に重要だという判断に至った」
オバマが同性愛者に共感し、同性カップルに法的保護を与えることに賛成していることは以前から明白だった。昨年2月には、「結婚は男女間のみのもの」と定めた婚姻保護法は「違憲」との考えを示した。同9月には、同性愛者であることを公言して軍務に就くことを禁じた規定を撤廃した。
しかし同性婚はアメリカの世論を二分する大問題。各種調査でも賛成は50%前後で、反対と拮抗する。ニューヨークなど6州と首都ワシントンで同性婚が認められている一方、約30州で禁止されているのが現状だ。国民の多くにそっぽを向かれるリスクを冒してまで、支持を明言することをオバマは避けていた。
流れを大きく変えたのは、バイデン副大統領の発言だ。バイデンは5月6日にNBCのテレビ番組で、同性と結婚する人も異性と結婚する人も「同じ権利を持つ。すべての市民権と市民の自由を享受できる」と述べた。
ホワイトハウス関係者としてはこれまでで最も踏み込んだ発言に、「ではオバマはどうなのか」という圧力が強まった。実際には、オバマは9月の民主党大会直前に同性婚支持を発表する予定だったが、バイデンの発言で前倒しになったという。
黒人有権者の離反が心配
これで同性婚が、秋の大統領選の争点として浮上した。共和党の大統領候補指名を確実にしているロムニーは「結婚は男女間のもの」と同性婚反対をあらためて表明。オバマとの対立を印象付けた。ただし「非常に微妙で、繊細な問題だ。人によってさまざまな見方がある」とも語り、声高な批判は避けた。
その背景にはここ数年で、同性婚への理解が国民の間で進んでいることがあるだろう。ワシントン・ポストの調査では、同性婚合法化を支持する割合は06年には36%だったが、今年3月には52%に上っている。
今のところ、オバマの発言の選挙への影響ははっきりしない。「ゲイの支持者に喜んでもらえるのはいいことだ。だが、(同性婚支持率が比較的低い)アフリカ系アメリカ人が離れてしまうのは困る」と、ホワイトハウスに近い関係者は本誌に語った。「若い有権者が歓迎してくれるのはいいが、信仰心のあつい中南米系を締め出すことになるのは好ましくない。誰も、オバマでさえも先が読めない状況だ」
数字を見る限り、オバマ支持のアフリカ系アメリカ人が今回の件で共和党支持に変わる心配はなさそうだ。ピュー・リサーチセンターの4月の調査では彼らの同性婚反対率は49%で、08年の63%から大幅に減っている。多くのアフリカ系アメリカ人にとっては同性婚問題より、黒人大統領の存在のほうが大きな意味を持つのだろう。
何事も「言うは易し」だし、特に選挙の年にはそうだと指摘する向きもある。同性婚合法化に向けてオバマ政権が具体的に動かなければ、歴史的発言に大喜びした支持者をがっかりさせるだけかもしれない。
[2012年5月23日号掲載]