ブッシュ、WMDないと知って気分悪くなった
『決断の瞬間』の出版を機に退任後初めてインタビューに応じたブッシュ前米大統領がのぞかせた弱気な一面
評決を待つ身 少し距離を置いた歴史の評価がブッシュの心のよりどころ(10月15日) Jeff Haynes-Reuters
ジョージ・W・ブッシュは大統領在任中、支持率が90%にも達した最高の瞬間がある。それは9・11同時多発テロの起こった翌週のこと。それまで賛否の分かれる大統領だったブッシュが、突如として誰からも支持される存在になったのだ。
その8年後の大統領退任時、彼の支持率は30%以下にまで落ち込んでいた。大した問題ではない、と今、ブッシュは語っている。在任中に支持率や批判を気にしたことは一度もなかった、と。自らが下し、政権の大半を動かしてきた数々の決断に対して、ブッシュが絶対的な自信と確信を持っていることがうかがえる。
大統領職を退いてから初めてとなるNBCテレビのインタビューの中で、ブッシュは9・11からハリケーン・カトリーナ、2008年の経済危機まで、在任中のあらゆる重要問題について口を開いた。
イラク戦争で拙速過ぎる勝利宣言を出したこと、カトリーナで打撃を受けたルイジアナ州ニューオーリンズの被災地を大統領専用機の窓ごしに視察する姿が報道されたこと――ブッシュは時には間違いを犯したこともあったと自ら認めた。それでも、その時々の情報に従って自分が下してきた決断について、謝罪することは決してなかった。
だがいつもは自分を疑いもしないブッシュが、弱気な一面も見せた。過去の決断を振り返ってみれば、必ずしも全てが賢い判断だったとはいえないかもしれない、とほのめかしたのだ。
ブッシュは、開戦の根拠となった大量破壊兵器(WMD)がイラクに存在しなかったことを知って気分が悪くなったことを打ち明けた。銀行救済のための政策だったとして批判の多い08年の不良資産救済プログラム(TARP)についても語り、「人々はあの政策を毛嫌いしていることだろう」と認めた。
しかしながら、アメリカの国民の半数以上がこの政策をバラク・オバマ大統領のものだと誤解し、その政策に批判的だとの統計を見せられると、ブッシュは笑い飛ばして言った。「国民の50%は、あの政策の内容さえ理解していない」
ブッシュは、もしも過去に戻ったとしても自分は同じ決断を下すことだろう、と話した。
それでも当時の決断は正しかった
在任中、ブッシュは過去を振ったり、いい時期と悪い時期を見つめ直して考えることなどほとんどしなかった。ブッシュは11月9日に出版された回顧録『決断の瞬間』の中で、またNBCのインタビューの中で、2期8年に及ぶ大統領在任中で最悪だった瞬間について語った。
それは、カトリーナでの対応が遅れたことについて、ラッパーのカニエ・ウェストが24時間テレビで「黒人のことなど気にしていないからだ」と人種的偏見が原因だとする発言をしたときだったという。ブッシュはその時を在任中の「最悪の時」だったと表現した。
カトリーナの被害に人々が苦しむ中、そんなことでショックを受けていたなんて自分のことしか頭にないと思われるのでは? そう問われたブッシュは、「かもしれないな」と答えた。
インタビューでは、質問は何度もイラク戦争のことに戻り、繰り返し意見が求められた。おそらくイラク戦争こそが、ブッシュ政権を定義する出来事だからだ。
誤った情報に基づきイラク戦争を開始したことについて、国に対して謝罪する意志があるか、と質問されると、ブッシュはこう答えた。「謝罪するときは通常、あの時の決断は誤りだった、と言うものだ。私は、あのときの決断が誤っていたとは思っていない」
オバマ政権が禁止することとなった水責めによるテロ容疑者の尋問手法を擁護していたことについて問われると、ブッシュはこの手法は合法だったと答えた。なぜなら「弁護士が合法だと言ったからだ」。