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米保守派反インテリのペイリン子分が学歴詐称
ペイリンの支持を受ける上院議員候補オドネルの学歴詐称で明らかになった保守派の偽善とコンプレックス
矛盾だらけ 名門大学出身者を攻撃するくせに学歴に執着するオドネル Jonathan Ernst-Reuters
アメリカの保守派や共和党は他人の学歴には懐疑的で、経済エリートは認めるくせに文化エリートに対して軽蔑的な態度をとる。特にバラク・オバマ大統領と彼が要職に起用した人々の輝かしい高学歴などは我慢ならず、いつもさげすんでいる。
それだけに、サラ・ペイリン元アラスカ州知事や保守派の草の根団体ティーパーティーの支持で共和党の上院議員候補(デラウェア州選出)に選ばれたクリスティン・オドネルが3度目の学歴詐称を指摘されたのは、まさに皮肉。ワシントン・ポスト紙のグレッグ・サージェントはこう書いている。
オドネルはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のリンクトインの自己紹介ページで、自分が通った学校の1つに「オックスフォード大学」を挙げ、「新世紀のポスト・モダニズム」を学んだと書いている。
しかし、それはフェニックス・インスティチュートという教育機関が単にオックスフォード大学の敷地を借りて実施した夏期セミナーにすぎなかったことが判明した。このセミナーを監督した女性は、オドネルのオックスフォードで学んだという主張は「誤解を招く恐れがある」と語る。
これだけなら大した問題ではないかもしれない。だが彼女は既に学歴を1度のみならず2度も誤魔化していたことが明らかになっている。数年前には、フェアリー・ディキンソン大学「卒業」としていたが、彼女が実際に学士号を取得したのは昨年の夏だ。さらには、プリンストン大学で修士号の取得を目指していると語っていたこともあったが、後にプリンストンの大学院で授業を受けたことさえなかった事実を認めた。
ほしくてたまらない高学歴
実に皮肉だ。学歴詐称がばれたことだけではない。プリンストンに通ったと嘘をついたオドネルのほうが、実際にオックスフォードやプリンストンを卒業した人よりよほど「エリート主義者」だということもバレてしまった。
保守派の人気トークショー司会者ラッシュ・リンボーらは、ハーバード大学法科大学院出身のエレーナ・ケーガン連邦最高裁判事をエリート主義者だと非難した。だがそこに通ったという事実だけでは、彼女が人の価値は学歴で決まると考えている証拠にはならない。もちろんそう考えている可能性も否定できないが、ハーバードに通ったという事実から判断できるのは、彼女がそこでの教育を望んだということだけだ。(公立ではなく授業料の高い私立を選んだのはエリート主義だ、とまだしつこく反論してくるかもしれないが、その主張は右派的ではなく、左派でポピュリスト的だ)
一方、年をとってからプリンストンやオックスフォードに通ったと嘘をつくのは、その経歴がほしくてたまらないからだ。そんなかわいそうな自信のなさはさておき、これは若い時に得た学歴で中年層の実力が定義されるべきだと考えるエリート主義の表れにほかならない。さらに言えば、最高の大学とは、もともとキリスト教徒の白人男性だけが入学を許された古くて学費の高い学校だとする偏狭な見方の表れでもある。
宇宙や生命の起源は神だとする創造論を信じるオドネルは、進化論を説く自然科学の学者に噛みつく。相手が生物学の博士号をもっていようと、神を信じる人々のほうが正しいと主張し、進化論が嘘でないと言うなら「今現在ヒトに進化しているサルはどこにいるの」とまで言うオドネルだからこそ、学歴詐称は二重の裏切りだ。
ラッシュ・リンボーはよくエリート校出身者を浮世離れしていると非難するが、本当に「ずれて」いるのはオドネルのほうではないか。