最新記事

ツイッター

あなたのつぶやきが永久保存される意味

米議会図書館がすべての公開ツイートを保存すると発表したが、これは誰にとって歓迎すべきことなのか

2010年4月19日(月)15時57分
バレット・シェリダン(本誌記者)

歴史的つぶやき 何げないたわ言もすべて後世に残る Mario Anzuoni-Reuters

 つぶやきはどう死ぬのか。素早く、静かに、死ぬ。ツイッター利用者なら誰でも知っているだろうが、この延々と流れ続ける「ツイート・ストリーム」は寿命が短い。どんなメッセージも数時間で賞味期限が切れてしまう。

 そんな状況が4月14日に一変した。米議会図書館がすべての公開ツイートを保存すると(もちろんツイッターを通じて)発表したのだ。そう、すべてのつぶやきだ。あなたの義姉が朝食に作ったブリトーについての退屈なレビューも、俳優ジョン・ラロケットによる140字の音詩も、すべて後世のために保存されることになった。

 これは、ほとんどすべての人にとって朗報だろう。ツイッター社にとっては勝利だ。ライバルを出し抜いて正統性のお墨付きを得たのだから。議会図書館にとってはPRの大成功だ。偏狭な官僚機構がデジタル時代に適応できることを世界に示したのだから。

 そして何より、研究者や歴史家にとっては強力な道具になる。ツイートの大半はたわ言だが、賢明なデータ解析者は膨大な情報──ツイッター社のある幹部はこの情報群を「地球の鼓動」と呼ぶ──の中から真実を探り出すことができるだろう。

2028年大統領の過去も丸見え

 個々のツイートも歴史家の注目を集めるかもしれない。議会図書館は、バラク・オバマが08年の大統領選で勝利したときのツイートは保存する価値があると指摘する。もし例えば現在の若いツイッタラーの1人が28年に大統領になったとしたら、歴史家は(そして醜聞を探り出すジャーナリストも)過去のツイート記録が残っていてよかったと思うだろう。

 実は、議会図書館の決定に少し当惑している唯一の集団は──政府が何かをしていることに怒る草の根保守派運動「ティーパーティー」参加者を除けば──ツイッター利用者たち自身かもしれない。私たちの思考、文章、画像、アイデアがどこかのデジタル倉庫に永久に保管される世界が急速に近づいている。私たちの大半は頭ではそれを認識しているが、行動は必ずしも伴わない。まだ中途半端な状態だ。

 走り書きのツイートが論議を呼ぶ事例が既にちらほら出ている。例えば、オバマ大統領がラッパーのカニエ・ウェストを「あほ」呼ばわりしたことをABCニュースの記者がツイートして問題になった。

 2028年の大統領候補者たちは、若き日の自分が残したデジタル足跡にメディアがアクセスするのを嫌がるかもしれない。しかし、選択の余地はなくなりつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米卸売物価指数、5月は前年比2.6%上昇 前月比0

ワールド

IAEA理事会、イラン非難決議採択 イランは対抗措

ワールド

インド西部で離陸直後市街地に墜落、死者多数 英国行

ビジネス

ECB金利は適切な水準、インフレ低下は一時的=シュ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 2
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 6
    【クイズ】今日は満月...6月の満月が「ストロベリー…
  • 7
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 8
    【動画あり】242人を乗せたエア・インディア機が離陸…
  • 9
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中