最新記事

銃規制

「銃を持ってスタバに行こう」の波紋

「リベラルの巣窟」というイメージが祟って、銃を持ち歩きたい保守派の示威の場に

2010年3月4日(木)16時34分
ダン・ミッチェル

とんだ災難 自分たちを巻き込まず、ただコーヒーを売らせてほしいと訴えたスターバックス Chip East-Reuters

 スターバックスには気の毒と言うほかない。アメリカの銃権利擁護派と反対派が、スターバックスの店舗を舞台にいかれたイデオロギー戦争に突入したのだ。

 銃権利擁護派は、たとえ私企業の所有地であっても大っぴらに銃を持ち歩く権利が彼らにはあるという狂った理論を、スタバで証明してみようと思い立った。当然ながら彼らにそんな権利はない。スターバックスには、銃権利派だけでなく他の誰をも店に入れない権利がある。だが実際には、人に見えるように銃を携帯することが法律で認められている州では、大っぴらな持ち込みも認めている。

 スターバックスが標的に選ばれたのは偶然ではない。保守系の草の根ネットワーク「ティーパーティー」のメンバーやそれに類する人々にとっては、スターバックスこそアメリカのリベラルの象徴であり「ラテをすするエリート主義者ども」の巣窟だからだ。

 これはもちろん、たわ言に過ぎない。むしろ、スターバックスほど中流階級的なものはない。もしティーパーティーのメンバーがわずかでも理解力をもっていれば、多くの「進歩派」も、中流階級的なスターバックスを現状維持の象徴として嫌悪していることに気づいただろう。

店員にも危険が及びかねない

 銃規制派は、おそらく使命感に駆られてこの騒ぎに参戦し、銃をひけらかすならず者たちを店に入れないようスターバックスに要求した。

 だが、スターバックスはただお客にコーヒーを売りたいだけ。だから両者に、どうか矛を収めて欲しいと頼んだ。そしてわれわれを放っておいてくれ、と。

 スターバックスは今後も、それが違法でない州では銃の持ち込みを認める方針。「もし我が社が、人に見える形での銃の携帯を認める法律と異なるルールを採用すれば、パートナー(店員)は違法行為を犯したわけでもない顧客に店から出て行ってもらわなければならなくなる。それは不公平であると同時に、店員が危険な立場に置かれる可能性もある」と、スターバックスは書面で発表した。

 銃規制をめぐって争う両当事者に対しては切実にこう訴えた。「スターバックスや店員たちをこんな危ない対立に巻き込むのはやめてほしい」

*The Big Money特約
http://www.thebigmoney.com/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中、スペインで協議初日終了 TikTok売却など

ワールド

ロシアに制裁科す用意、欧州の措置強化が条件=トラン

ビジネス

アングル:中国EV技術、海外メーカーの導入相次ぐ 

ワールド

北朝鮮の金与正氏、日米韓の軍事訓練けん制 対抗措置
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    悪夢の光景、よりによって...眠る赤ちゃんの体を這う…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中