最新記事

米社会

セレブ妻が離婚を決めるとき

故郷に帰ったウッズの妻、我慢し続けたヒラリー……有名人の夫の浮気が発覚したとき、妻を離婚に踏み切らせる最後の一線はどこにある?

2009年12月15日(火)17時26分
パット・ウィンガート(ワシントン支局)

不倫の代償 2006年の全米オープンを制したタイガーの祝福に駆けつけた妻エリンは、愛娘と家を出た Matt Sullivan-Reuters

 有名人の妻は、夫の浮気をどこまで許せるか。
 
 アルゼンチンへの不倫旅行が発覚したサウスカロライナ州知事のマーク・サンフォードの妻ジェニーは、離婚を決断した。タイガー・ウッズの妻エリン・ノルデグレンは、イメージ失墜に苦しむ夫を残し、子供を連れてスウェーデンの孤島へ避難した。こうした例を見るかぎり、最近のセレブ妻は昔ほど我慢しなくなったとようにみえる。

 だが、2009年は「女性の逆襲の年」だったとも言い切れない。夫の浮気が世間に知れ渡っても我慢を続けるセレブ妻もいる(大統領選の最中に不倫していたジョン・エドワーズの妻エリザベス、高級売春クラブを利用した元ニューヨーク州知事エリオット・スピッツァーの妻シルダ、昔から夫の浮気癖に苦しんできたヒラリー・クリントンなど)。

 有名人の「良妻」は何が起きても夫に寄り添うべきだと考えられていたのは、さほど昔のことではない。元ニュージャージー州知事のジェームズ・マグリービーは04年、男性との不倫を告白する記者会見の直前に妻のディナに「気持ちを落ち着けて、現代のジャクリーン・ケネディになれ」と言った。ディナは記者会見を耐え忍んだが、後に離婚して暴露本を執筆。ジャクリーンのようにはいかなかった。

世間に先に知れるとリスクは高い

「どんなときに踏みとどまり、どんなときに離婚すべきかという問いに正解はない」と、エバーグリーン州立大学(ワシントン州)のステファニー・クンツ教授は言う。「夫を許し、結婚を守る努力をしたからといって弱い女というわけではない。善良な人でも間違いを犯すことはあるし、誘惑に負けてもそれを乗り越えて夫婦関係を続けるケースもある。(離婚するかどうかの)境界線は二人の関係の中核を傷つけてしまったかどうかだと思う」

「夫婦関係の中核を傷つける行為」とはどんなものか。例を挙げてみよう。

●一度の浮気なら許せるかもしれないが、相手の女性に宛てた情熱的なメールがネットに出回ると離婚リスクは高まる。「他の誰かを熱烈に愛しているという夫の告白が、あなたではなく世間に最初に伝わってしまったら、夫を許し、恨みを抑えるのは難しい」と、クンツは言う。

●浮気相手が一人なら許せるかもしれないが、バーで知り合った女性と次々に関係をもち、長年にわたって複数の相手と交際していた場合は許しがたい。とくに、妻が妊娠中の浮気は確実に一線を越える行為だ。

「自宅に女性を次々に連れこんで、あちこちでセックスしていた場合、軽率だったとか誘惑に負けたという次元ではない」と、クンツは言う。「ひどい侮辱だ。我慢できる女性はいない」

●一度の浮気なら許せるかもしれないが、相手が男性だった場合、それも夫の記者会見の直前にスピーチ原稿を読まされるまで、夫が同性愛者であることを知らなかった場合には、関係修復は困難だろう。

 インターネットによってプライベートな行為があっという間に世間に知れ渡ることも、離婚のリスクを高める。「公衆の面前で恥をかかされるという意味では、以前よりずっと厳しい状況にある」と、クンツは言う。世間は有名人のセックススキャンダルに「いい加減ウンザリしているはずなのに、逆に際限なく興味をそそられている」のだから。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中