最新記事

米外交

米元儀典長、オバマのお辞儀に賛否

2009年11月25日(水)14時34分
イブ・コナント(ワシントン支局)

 オバマ米大統領が日本の天皇に深々とお辞儀した問題で、米国務省で儀典長を務めた経験がある2人の人物に意見を聞いた。

ロイド・ネルソン・ハンド
リンドン・ジョンソン大統領に仕えた儀典長(1965〜66)

 別に誤りではない。外交儀礼とは、訪問国の伝統と習慣に従うよう努めること。頭を下げるのは日本では社会的にもビジネス上でも伝統であり、尊敬の表現だ。

 イギリス女王の前ではアメリカの大統領たちは頭を下げ、ファーストレディーや女性大使は片膝を曲げて尊敬の念を表現する。ニクソン大統領が昭和天皇に会ったときもお辞儀をしていたではないか。

 ジョンソン大統領の時代、訪米したイタリアの首相も深いお辞儀をした。そして首相のこの姿を見たイタリア国民も同じような賛否両論の反応を示したものだ。

 オバマは少しばかり深く頭を下げ過ぎたかもしれない。しかし私たちは世界で起きているさまざまな問題に取り組んでいるところだ。そんなときに頭を下げるのは8センチにすべきだ、いや15センチだなどと論じていていいのだろうか。こんなことで騒ぐのはまったく無意味だし、オバマは外交儀礼に反してなどいない。

ヘンリー・カットーJr.
ニクソン大統領とフォード大統領に仕えた儀典長(1974〜76)

 国家の長たるものは互いに頭を下げるべきではない。オバマはアメリカ合衆国のトップで、天皇は日本のトップ。同じ立場にいる相手に頭を深々と下げるのは間違っている。

 お辞儀とは、するほうが力関係で劣っていることを表すものだ。相手が日本人であれ誰であれ、示すべき態度ではない。握手ならまったく問題ない。オバマは天皇と握手もした。おそらく(批判に備えて)逃げ道をつくったのだろう。

 オバマは体を本当に低くした。それだけで不適切だ。誰かのアドバイスなのか、それとも自分の考えでやったのだろうか。ニクソンもフォードも日本の天皇にお辞儀をするなんてことは考えもしなかった。

 71年に昭和天皇と会見したときのニクソンのしぐさについてだが、私はあれをお辞儀とは呼ばない。ただ体をかがめたにすぎない。背の高い人間が低い人間と話すときには、お互いに声が聞こえやすいように身をかがめるものだ。

[2009年12月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能

ビジネス

債券・株式に資金流入、暗号資産は6億ドル流出=Bo

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇用者数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中