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米政治

アメリカにはびこる「嫌欧症」の愚かさ

2009年9月17日(木)15時17分
マイケル・フリードマン

欧州モデルでは人類は繁栄しない

 嫌欧症はますますエスカレートししつつある。リンボーはヨーロッパの一部がアメリカの敵だった時代に時計の針を戻し、オバマをアドルフ・ヒトラーになぞらえた。「オバマはヒトラーのように、仲間を密告するよう市民に求めている」「ヒトラーもオバマのように、命令によって支配した」

 FOXニュースのトーク番組司会者グレン・ベックは8月11日、行進するナチスの映像を流し、アメリカをワイマール共和国時代のドイツと比較してみせた。さらにアメリカは経済破綻に向かっており、間もなく政府は──ナチスと同じように──高齢者と障害者向けの医療保険の支払い停止を決めるかもしれないと主張した。

 だが右派の攻撃は、論争の本質を見えにくくしている。どんな医療保険制度や政策ならアメリカをもっと強く、繁栄した国にできるかという問題だ。アメリカがヨーロッパ化することはあり得ない。まして独裁体制のファシスト国家などになるわけがない。アメリカは今後も独自の道を歩んでいく。

 それにしても、ヨーロッパの取り組みや政策に目を向け、最良の部分を取り入れることの意義を堂々と説く人物はいないのだろうか。政治学者のチャールズ・マレーは今年3月、保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所で講演し、「今後数年間でアメリカが取り返しのつかない傷を負う可能性は間違いなくある」と警告した。「ヨーロッパ型のモデルには根本的な欠陥がある。物質的には成功しているが、人類の繁栄には結び付かない」

 そのとおりかもしれない。だが、マレーと同じ保守派の論客たちが繰り広げるイデオロギー最優先の大衆扇動は、ヨーロッパがアメリカに与えてくれるヒントを無視する結果につながりかねない。

[2009年8月26日号掲載]

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