バーナンキが大規模詐欺の被害者に
本誌独占情報:FRBのバーナンキ議長が、管轄下の米銀行を舞台とした大規模な詐欺グループの被害にあっていた
油断大敵 小切手の入ったバッグを盗まれ、詐欺被害にあったFRB議長バーナンキと妻のアンナ(8月22日) Price Chambers-Reuters
個人のクレジットカード情報などを盗み出して金銭をだまし取る犯罪者は、運の悪い消費者だけでなく強大な権力者もターゲットにできる。そのいい例がアメリカ銀行界の長、ベン・バーナンキだ。
最近の裁判資料を本誌が確認したところ、バーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長が、ある詐欺組織の数百人の被害者の1人となっていた。この組織は、すでに有罪判決を受けている詐欺師「ビッグ・ヘッド」が率いるもの。だまされやすい消費者と、全米で10以上の金融機関から210万ドル以上をだまし取ってきたという。
昨年の夏、ウォール街を襲った金融危機への対処に追われていたちょうどそのころ、バーナンキは妻が財布や夫婦共有名義の小切手帳が入ったハンドバッグを盗まれたことを知った。裁判資料によれば、その数日後、何者かがその小切手を現金化し始めた。「彼は、それを快く思っていなかったといっていい」と、バーナンキの親しい同僚は言う(私的な問題について話しているため匿名を希望)。
今回初めて明らかになったことだが、バーナンキの小切手を盗んだ犯人は、すぐにシークレットサービスと米郵便検査局による大規模な捜査の対象となった。捜査は、バージニア州アレクサンドリアの連邦検事による一連の逮捕、刑事告発、起訴が続いたここ数カ月で山場を迎えた。ターゲットとなったのは昔ながらの窃盗とハイテクを駆使した詐欺行為を組み合わせて、銀行口座番号を盗み出そうとする全米規模の犯罪組織だ。
「個人情報の盗難は毎年、何百万ものアメリカ人が被害にあう深刻な犯罪だ」と、バーナンキは書面で本誌に述べた。「私たちの家族は、1つの犯罪組織が生んだ500件の被害の一例にすぎない。こうした金融犯罪の解決と防止に、忍耐強く熱心に取り組む警察当局に感謝している」
小切手に銀行口座や自宅の電話番号も
個人情報の盗難といえばたいてい、インターネットを通じてクレジットカード情報などを盗むサイバー犯罪と関係がある。しかしバーナンキの場合は、昔ながらの路上犯罪に偶然巻き込まれてしまったようだ。
裁判資料によれば、バーナンキの妻アンナは08年8月7日、首都ワシントンの自宅からほど近いスターバックスでイスの後ろからハンドバッグをひったくられた。中には運転免許証、社会保障カード、クレジットカード4枚、大手銀行ワコビアの夫婦共有名義の小切手帳が入っていた。小切手一枚一枚にバーナンキの銀行口座番号、自宅住所と電話番号が印刷されていた。アンナはその日のうちにワシントン警察に盗難を届け出た。
しかし後に、犯人は並みの窃盗犯ではないことがわかった。連邦捜査官と複数の州警察が何カ月も追っていた犯罪集団の一員だったのだ。
リーダーの1人であるクライド・オースティン・グレイJr.はバージニア州アレクサンドリアの連邦裁判所で先月、銀行詐欺を共謀した罪を認めたばかりだった。裁判記録によれば、グレイ(組織内では「ビッグヘッド」の名で知られる)は、スリや郵便泥棒、事務職員の一団を雇い、小切手やクレジットカード、軍人身分証明書、そのほかの個人情報を盗ませていたという。