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マイケル・ジャクソンマイケルを殺した?あのクスリの正体
「プロポフォール」は本来病院で専門医が使う麻酔薬。専属医は厳しい立場に
7月28日、捜査当局はラスベガスにあるマーレー医師の自宅とオフィスを再び家宅捜索した(メディアの取材に答えるロサンゼルス市警関係者) Steve Marcus-Reuters
「ポップスの帝王」マイケル・ジャクソンの死因をめぐる捜査は死から1カ月以上経った今も続いているが、はっきりした答えは出ていない。最終的な検視の結果は来週出るとみられるが、現時点で死因として名指しされているのが「プロポフォール」という薬物だ。
捜査当局は「ディプリバン」という商品名でも知られるこの薬物をマイケルの自宅で大量に発見。専属医も死の前夜にこの薬をマイケルに投与したことを認めたとされている。
有名人が薬物の過剰摂取で命を落とすのはよくあることだが、原因はたいてい、コカインやモルヒネ、ヘロインなどの麻薬。このプロポフォールという聞きなれない名前の薬物は、いったいどんなものなのか。
「プロポフォールは20〜25年前に麻酔薬として開発された。患者を眠らせるほか、健忘も引き起こす」と、疼痛管理のエキスパートでコネチカット疼痛学会会長のデービッド・クロス医師は言う。
プロポフォールは救急救命室での処置や手術の際に鎮静目的で使われ、麻酔薬としては理想的な特徴を備えている。「効果はすぐに現れてすぐに消える。点滴を止めれば5分か10分で患者ははっきり目を覚ます」とクロスは語る。
眠っても休めない間違った薬
不眠症に悩んでいたといわれるマイケルのことだから、プロポフォールの助けを借りてつかの間の眠りにつきたかったのかもしれない。だが悲しいかな、この薬は彼を不眠による極度の疲労から救ってくれなかったと思われる。
「この薬では深い眠りは訪れない」とクロスは言う。「不運なことにマイケル・ジャクソンは間違った説明をされていたか、誤解していたのだ。脳が適切な睡眠段階に入らなかったのだから、きちんと休息が取れないまま目覚めていたのだろう」
この薬品が病院外で投与されたことについて「信じがたい」と語るのは、ミシガン地域医療センターの心臓麻酔医、ケネス・エルマシアンだ。「薬局に行って処方箋を渡せばもらえるような薬ではない」
エルマシアンが理事を務める米麻酔学会はプロポフォールの危険性に鑑み、麻酔医としての訓練を受けていない医師が患者に投与することは控えるよう呼びかけている。
身体への影響の出方が人によって大きく異なることも、この薬の危険性を高めている。「ある患者では大丈夫だった量が他の人にとっても安全だとは限らない」とエルマシアンは言う。年齢や体重、どのくらい水分を取っているかといった要素によって効果は左右され、過剰に投与すると血圧の低下や呼吸困難を招く恐れがある。 おまけに依存症になりやすい。
過失致死罪では「不十分」
ただし少ない頻度で適切に投与するなら、危険性はそれほどでもない。「手術のために1回使うくらいなら依存症にはならない」とクロスは言う。「リカバリールームで目を覚ましたら、それで終わりだ。呼吸抑制との関連性もない。適切に投与されればこの薬は非常に安全だ。最も安全な薬の部類に入る」
だがマイケルの場合はそうではなかった。「複数の薬品の過剰摂取だったと判断されるのではないかと予想している」とクロス。「たぶんあの晩、彼は他の薬も摂取したのだろう」
マイケルの専属医、コンラッド・マーレー医師は厳しい立場に立たされている。AP通信によれば、マーレーは警察に対し、マイケルにプロポフォールの点滴を行なったことを認めたという。もし点滴中のマイケルの状態をきちんと監視していなかったとすれば、過失致死の容疑では不十分だというのがクロスの考えだ。
クロスは言う。「弾丸を装填した銃を渡して『引き金を引け』と言ったようなものだ」