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アメリカ経済保険金欲しさに愛車に火を放つ愚
車のローンが払えず違法投棄で保険金を騙し取ろうとするアメリカ人が急増
不法廃棄 フロリダ州の運河でも保険金目当ての自動車投棄が問題に Carlos Barria-Reuters
アメリカ人は車を愛していたものだ。しかしこの不況で、その愛も冷めはじめている。
例えばサウスカロライナ州のある男性は今年初め、02年式のフォード社製ピックアップ車が盗まれたとして保険を申請。車はすぐに自宅から数キロのところで黒焦げになった状態で発見された。こじ開けられたような形跡は見つからなかった。代わりに明らかになったのは、この男性が車のローンの支払いを滞納し、過去2回もローンの借り換えをしていたのを隠していたこと。
カリフォルニア州のある女性は、GM社製の02年式SUV車が駐車場から忽然と消えたと保険申請した。実際のところ、彼女はその車をメキシコで解体し、部品を売りさばいていた。アリゾナ州の男性は、06年式の乗用車の月々の返済ができなくなり、娘の彼氏に、娘との結婚を認めてやるから車に火をつけてくれと頼んだ。
全米保険犯罪局(NICB)の広報担当者フランク・スカフィディによれば、このように所有者自ら車を放棄してしまうケースが増えていると言う。火をつけたり、水没させたり、解体業者に引き渡したり......。車を維持し続ける負担から逃れるために盗難を装い、保険金を騙し取ろうとするケースは後を絶たない。NICBによると、今年は08年と比べて24%も増加。車の違法廃棄に最もよく使われる放火が疑われる件数も27%増加しているという。
この手の詐欺の原因が不況にあると証明する確たる統計はない。それでも不況が影響していると思われる兆候はある。NICBのある調査では、04年から08年3月において、保険金詐欺を目的とした車の廃棄件数の増加とガソリン価格の上昇に直接的な相関関係があることが示されている。特に燃費の悪いSUV車やピックアップ車が捨てられた。
しかし08年後半にはガソリン価格が下落したのに詐欺件数は増え続けた。これは景気後退によるところが大きい、と保険詐欺反対連盟のジム・クイグルは言う。大抵の場合、修理代やローンが払えなくなった結果だ。ただ単に月々の返済額が高すぎるローンを組んでいる場合もある。「普通は経済的なプレッシャーに耐えられない」と、クイグルは言う。「(彼らは)保険金目当てで不要になった車を違法廃棄して、手っ取り早く問題を解決しようとしている」
エリー湖の底からSUV
多くの州が同様の問題に頭を抱えている。カリフォルニア州とテキサス州は特に顕著で、プロの詐欺集団に車両火災を依頼したというケースも報告されている。自然災害に便乗するパターンもある。昨年大型ハリケーン「グスタフ」が上陸した際、ミシシッピー州の警察はハリケーンの暴風域にある海岸線に放置された何台もの怪しい車を発見した。
ニューヨーク州詐欺・消費者サービスのスティーブン・ナックマン副本部長によれば、同州では07年、車の違法廃棄による逮捕件数は96人件。08年にはその数は35%も跳ね上がり、130件に上った。
犯人がこれを簡単に犯せる犯罪だと考えていることも問題だ。この犯罪に手を出す者の大半が、保険会社は特に疑念を持たないだろうと想定している。しかしスカフィディによれば、廃棄された車にはその形跡が残っている。保険金詐欺の手口として一般的ではないが、件数が急増していることもあって保険会社にとっては摘発しやすい。保険会社が証拠を見つけられないと思うなら、考え直したほうがいいと、スカフィディは言う。
昨年シボレーのSUV車の盗難を申請した女性がいたが、保険会社が彼女の車を発見した場所は5大湖の1つ、エリー湖の底。アクセルには岩が結ばれていた。「こんなことをしても何の得にもならない。保険金が支払われなかったら、すべて自己負担しないといけない上に、訴追される可能性もある」と、ナックマンは指摘する。
フォード社製のピックアップ車に火を放ったサウスカロライナ州の男性は3年の禁固刑を言い渡された。カリフォルニア州の女性も90日間の実刑を受け、郡刑務所に。娘の彼氏に詐欺を頼み込んだ男の場合は? 彼氏がすべてを警察に自供してしまった。