老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳活」最新研究
Exercise for Your Brain
ヨガ特有の呼吸法と動作が加齢による脳や心血管系のダメージに効く可能性があるという RGSTUDIO/ISTOCK
<運動療法の驚くべき効果は「MRIの映像で分かるほど」と研究者。ヨガにも同等の効果が?>
年を取るにつれて私たちの脳に何が起きるのか。主な変化は脳の萎縮だが、運動によって萎縮を遅らせ、ひいてはリセットできる可能性があることが、最新の研究で明らかになってきた。
「脳は非常に複雑な器官で、多くの部位が年老いても脳が機能するように働く」と、脳の老化に詳しいイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のブラッド・サットン教授(生物工学)は本誌に語った。「脳の構造の変化はMRI(磁気共鳴映像法)で確認できる。どんな構造で、どの程度機能するのか分かる」
構造レベルでは、脳は老化するにつれて変化する。「年を取ると脳の組織が萎縮して水分(髄液)で満たされた部分(脳室)が拡大し、脳の容量の減少が見られる」
「映像を拡大すればニューロン(神経細胞)間の情報伝達も確認できる。ニューロンの構成と脳の異なる部位間の情報伝達の変化も分かる」
構造の変化は全身レベルで起きる。「私たちが注目するもう1つの大きな領域は血液の流れだ。脳内の血液の分布状況と血流に注目している」
「脳内のニューロンに十分な酸素と栄養を確実に供給し、老廃物を洗い流す必要があるが、そうしたニーズに血管がどの程度対処できているのか。加齢によるダメージを受けやすい領域はどこか──血管が詰まったり硬くなったりするのかもしれない」
実は心臓自体にニューロンのネットワークがあり、脳と絶えず情報をやりとりしている。「このシステムが老化に伴う難題にどう適応し、どのくらい臨機応変に酸素と栄養分を組織に回すのか」
1日1時間週3回で効果
サットンらの研究チームは有酸素運動が以前から高齢者の認知機能向上と関連付けられてきたことに注目。運動療法でヨガにも同等の効果があるかどうかを調べている。
「有酸素運動のグループはわずか半年で老化で萎縮した脳が大きくなる。映像で分かるほどの大きな効果だ」
言い換えれば、わずか半年の有酸素運動で脳の機能回復効果が期待できるわけだ。だが年を取るにつれて有酸素運動が難しくなる可能性もある。