対決 AI vs 人間 勝利を手にしたのはどっちだ!?
もはやAIが人間を凌駕するのは時間の問題? Ihor Biliavskyi - iStockphoto
<さまざまな分野で活用が進むAI。ビッグデータの処理などとは異なる分野でも人間を凌駕するのか?>
今年の1〜2月、韓国の地上波放送SBSで放送されたAIとの対決番組『世紀の対決─AI vs人間』が大きな話題を集めた。
これまでもAIと人類は、ボードゲームをはじめ多く行われてきた。特に世界的にも注目されたニュースといえば、2016年 囲碁界最強の一人と呼ばれたイ・セドル棋士がグーグル傘下のITベンチャーが開発したAI「AlphaGo」との戦いに敗北したことだ。この"事件"は多くの人びとに衝撃を与えた。
今回の特番は、1月29日から毎週金・土曜の午後10時~というゴールデンタイムに編制された旧正月のスペシャル番組で、これからのAIの可能性を探る意味と視聴者の関心を集めるのに十分な5つのジャンルで勝負が行われた。
対決のジャンルは歌、ゴルフ、プロファイリング、モンタージュ描き、株式投資等が用意され、これまでのボードゲームなど勝敗が白黒はっきりした分野だけでない点でも注目が集まった。
特に、芸術分野に関しては「AIなど機械に人を感動させる力があるものか」という人間の負けられない意地がある。映画業界以外知らないで生きてきた筆者も、総合芸術といわれる映画とAIの共存には興味があるものの、やはり核となる台本や演出、演技などをAIに頼ってしまう世界を想像すると若干抵抗がある。
そういった意味で、特に芸術分野である「歌対決」に興味があった。かつてNHK紅白歌合戦に没後30年として"歌謡界の女王"美空ひばりのAIが出演し、『あれから』という新曲を歌い上げたが、視聴者からは批判の声も少なくなかった。故人の歌声を本人の意思に関係なく利用した点に関しては、故人の尊厳の是非についても論議された。
AIがフレディ・マーキュリーの声でK-POPを歌う
今回の放送では、番組の中盤にイギリスのロックバンド「クィーン」のボーカルであり、1991年に亡くなった故フィレディー・マーキュリーが、AIによって韓国人歌手ジョンインの歌『オルマッキリ』のサビ部分を歌う一幕も放送され話題となった。フレディー・マーキュリーは韓国語を話せるわけでもなく、今まで韓国語で歌った曲も発表されていないが、英語で歌うオリジナル音源からAIは学習し、国境と言語を越えた歌声を見事に復活させた。
また、番組最終回には100日間にも及ぶ作曲対決も放送された。44年間、韓国演歌トロットを作り続けてきた作曲家キム・ドンイルと、光州科学技術大学院が開発した作曲AI「EVOM」が新曲を作って発表するという。
従来の作曲AIたちは、既存の曲を大量に短期間で学習し、それをパターンに制作していたが、なんとこのEVOMは、数式化した音楽理論を覚えさせ、さらに作曲した部分で問題があれば人間がフィードバックし、AI自身がより良いものを作っていくという制作スタイルなのだという。
100日目の最終日、出来上がった2曲がスタジオで披露され、どちらがAIもしくは人間の曲か、事前に聞かされていないパネラーたちが当てるという対決が行われた。結果は、やはり人間は人間の曲を見抜くことが出来たわけだが、EVOMの渾身の一曲は見事なものだった。
株取引でAIと対決
そして、音楽と同様に注目を集めたのが、やはり多くの人の関心の高いお金、「投資」対決である。番組予告当初、投資分野と聞いたときにはAIの圧勝を予想した。投資は情報量と過去データがものをいう。いくらなんでもAIの情報分析量にはかなわないと思ったからだ。きっと大半の視聴者もそうだっただろう。
AI代表として登場したのは株式投資AI「RASSI」だ。開発者キム・ドンジン氏によると、このRASSIは、人間が寝静まった夜中にその日の株式市況をおさらいし、膨大な情報を学習しているのだという。放送では一人学習しているAIの姿も映されたのだが、一般の人間には理解できない言語がパソコン画面いっぱいに次々と流れていく異様な光景だった。