最新記事

宇宙探査

ボイジャー探査機を越えて太陽系の果てを探査せよ

2019年2月14日(木)17時00分
秋山文野

ニュー・ホライズンズがカイパーベルト天体ウルティマ・トゥーレを撮影した画像。「雪だるま」と呼ばれる球状の天体が2つ接触した形状だと思われていた。Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

<近年、宇宙探査で実績を誇るジョンズ・ホプキンス応用物理学研究所(APL)の、新しい星間探査機計画に注目だ>

小惑星探査の成果がつづいている

2019年は、NASAが2006年に打ち上げたニュー・ホライズンズ探査機によるカイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ(2014 MU69)」の探査で幕を開けた。初めて見えた海王星以遠の天体の姿は、雪だるまのような2つの2つの部分が接触した形状だと印象づけた。

2月になってニュー・ホライズンズがウルティマ・トゥーレを振り返りざまに撮した画像が届くと、雪だるまは実はパンケーキのように平たく潰れた形をしていたことがわかってこれもまた大変な驚きだ。ニュー・ホライズンズは20ヶ月かけてカイパーベルト天体探査のデータを地球に送る予定で、今後もまだ想像もつかなかった太陽系外縁部の姿を見せてくれるかもしれない。

UlitmaThule_Crescent_2-7-19.jpg

ニューホライズンズがウルティマ・トゥーレから離れつつ撮影した画像。「クレセント・ビュー」と呼ばれるこの画像がウルティマ・トゥーレの形状モデル作成の決定打となった。Credit: NASA/Johns Hopkins Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/National Optical Astronomy Observatory

DraftShapeModelGraphic_001-master.jpg

クレセント・ビューをもとに作成されたウルティマ・トゥーレの形状モデル。球ではなく、パンケーキ状の平たい形状だった。Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

また2月後半からは、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの表面に着陸し、サンプル採取を開始する。7月までには、インパクターと呼ばれる銅製の円盤をリュウグウの表面に衝突させ、クレーターを人工的に作る実験も行う予定だ。はやぶさ2は、小惑星形状が過去に高速で自転していたころの名残をとどめていると思われるそろばん珠のような形をしていること、表面はどこもかしこも岩だらけでゴツゴツしていること、意外な天体の姿を見せてくれた。

小惑星に衝突して、その方向を変える計画「DART」

そして、はやぶさ2が地球に帰ってくる2020年から入れ替わるように、NASAで新たな小惑星ミッションに挑む宇宙機の計画がある。その名をDART(Double Asteroid Redirection Test:二重小惑星方向転換試験)という。2022年に小惑星ディディモス(65803)に到着し、二重小惑星を構成しているディディモスの小さな衛星ディディムーン(仮称)に衝突して、その方向を変えるというミッションを行う。

これは、地球に近くいずれは地球に衝突する可能性がある小惑星の脅威に備え、軌道を変更して地球への衝突を避ける技術を実証するためのものだ。ディディムーンは小惑星の中では小さいとはいえ、直径150メートルの岩石だ。その12分の1の大きさの探査機を衝突させて、計画通りに軌道を変えられるものなのか。DARTはプラネタリー・ディフェンスという新しい技術を作り出そうとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中