最新記事

シネマ&ドラマ

話題作

クルーズ復活作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』

Tom Cruise's Best in Years Is All-Out Fun

頭を使わず楽しめるアクション映画

2014年7月9日(水)13時32分
ベン・スキッパー

印刷

 桜坂洋の『All You Need Is Kill』が原作のSF映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は、繰り返される「時間のループ」が物語の要だ──。そう聞いて、ハリウッドまで時間のループに陥ってしまったのかと思った。『恋はデジャ・ブ』と『スターシップ・トゥルーパーズ』を混ぜたような話で、トム・クルーズ主演のアクション映画なんて、見る前から展開が読めるような気がしたから。

 だがうれしいことに予想は外れた。この作品はすごく面白い。人生観を変えるような名作ではないにしても、しっかり楽しめる夏休み映画だ。

 クルーズ演じるケイジ少佐は前半ではいつもの彼のイメージと違い、軍人なのに広報担当で戦闘能力ゼロだ。恐ろしい地球外生物ギタイとの戦いから逃げ出し、脱走兵の汚名を着せられて壮絶な上陸作戦に参加させられる。すぐにエイリアンに殺されるが、時間のループのせいで、作戦に出発する日の朝に戻ってしまう。

 この死と生還を何度も繰り返して経験値を積んでいくケイジ。やがて彼は最強の女性兵士リタ(エミリー・ブラント)に出会い、彼女に鍛えられて戦闘能力を高めていく。そして2人は、ケイジが持つ時を繰り返す能力を使って、エイリアンとの戦いを終わらせようと計画する。

 クルーズの演技は弱虫だった前半のほうがずっといい。後半に入り、いつもの彼らしいスーパーヒーローに変貌していくと飽きを感じずにいられない。ただそれはそれで説得力があるともいえる。戦い、死に、生まれ変わるを何年も繰り返していれば、誰だって飽き飽きするし、嫌でも強靭にならざるを得なくなるからだ。

 クルーズより輝いていたのはブラントだ。屈強で実直な兵士を自信満々に演じている。口ひげの軍曹役のビル・パクストン、将軍役のブレンダン・グリーソンの好演も映画の成功に貢献している。

 問題はエイリアンだ。地球外生物として本当に存在しそうには見えない。躍動感や迫力はあるが、単調な動きに見えてくる。結末にもかなり無理がある。ストーリーに独創性がないのも痛いが、頭を使わずに楽しめるアクション娯楽としては合格点だ。

 共演者、脚本、そしてダグ・ライマン監督の経験豊かな演出に助けられて、クルーズのうれしい復活作となった。

[2014年7月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ

最新ニュース

ワールド

ペルー大統領、フジモリ氏に恩赦 健康悪化理由に

2017.12.25

ビジネス

前場の日経平均は小反落、クリスマス休暇で動意薄

2017.12.25

ビジネス

正午のドルは113円前半、参加者少なく動意に乏しい

2017.12.25

ビジネス

中国、来年のM2伸び率目標を過去最低水準に設定へ=現地紙

2017.12.25

新着

ここまで来た AI医療

癌の早期発見で、医療AIが専門医に勝てる理由

2018.11.14
中東

それでも「アラブの春」は終わっていない

2018.11.14
日中関係

安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録

2018.11.14
ページトップへ

本誌紹介 最新号

2024.11.26号(11/19発売)

特集:超解説 トランプ2.0

2024.11.26号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

アメリカ政治 異色の顔ぶれ満載のトランプ2.0を読む
■リスト 第2次政権のトンデモ閣僚人事、その人物像は
閣僚 問題児ゲーツを司法長官に、前代未聞の復讐劇が開幕
投資 トランプ当選に笑う業界、泣く業界
外交 片想い? 両想い? ディール外交の危険なプーチン愛
報道 大惨敗メディアに未来はあるか
ルポ 「眠れる有権者」のヒスパニックが目覚めた時
デジタル雑誌を購入
最新号の目次を見る
本誌紹介一覧へ

Recommended

MAGAZINE

特集:静かな戦争

2017-12・26号(12/19発売)

電磁パルス攻撃、音響兵器、細菌感染モスキート......。日常生活に入り込み壊滅的ダメージを与える見えない新兵器

  • 最新号の目次
  • 予約購読お申し込み
  • デジタル版

ニューストピックス

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム&ブログ
  • 最新ニュース