2016年──オバマ破壊の旅?
'2016': A Slick Pitch to the Anti-Obama Faithful
オバマはアメリカを破壊する白人差別のムスリム共産主義者──過激なのに説得力もあるこの映画は、反オバマの新たな攻撃材料になる
『2016──オバマのアメリカ』という映画をご存知だろうか。私はほんの24時間前、米共和党全国大会に出席していた俳優のジョン・ボイトから初めてこの映画のことを聞かされた。
「あらゆる人が『2016』を観るべきだ」と、ボイトは言った。「ただの党利党略映画じゃない。これは真実そのものなんだ」
この映画を監督したディネシュ・デスーザが訴える「真実」はシンプルだ。オバマはケニア人の父から受け継いだ反植民地主義的で反資本主義的で反キリスト教的な「夢」のために、アメリカを破壊しようと突き進んでいる──。
デスーザはニューヨークのキリスト教の大学キングス・カレッジの学長。オバマ批判で知られる保守派の政治評論家でもある。
彼が監督した90分のこの映画は、オバマの知人などのインタビューやデスーザのナレーションで構成されるドキュメンタリー。目的は、オバマの大統領としての行動の裏にある本当の目的を暴くことにある。そのためデスーザはオバマの人生を3年以上にわたって追跡。父バラク・オバマ・シニアを知る人々にもインタビューを行っている。ほとんど会ったこともないのに、若きオバマに最も大きな影響を与えた人物──それが父だった、というわけだ。
デスーザは過激な表現は用いていない。だが、彼の言う反資本主義とはつまり「共産主義」。反キリスト教は「イスラム教」で、反植民地主義は「反白人主義」ということだ。簡単に言えばこの映画は、「過激な共産主義ムスリムで白人嫌いのオバマがアメリカを乗っ取ろうとしている」と訴えている。
ドキュメンタリーでは異例の大ヒット
今秋に大統領選を控え、オバマと共和党のミット・ロムニー候補が支持率で拮抗する中、この映画はかなり過激なスローガンだ。
デスーザ自身はインド出身で、自分は人種差別主義者ではないと強調している。自分とオバマとは肌の色がほぼ同じだ、と彼は言う。とはいえ、彼の映画は有権者の人種的、政治的な恐怖を見事に呼び起こすような出来栄えだ。
8月27日に開幕した共和党全国大会の会場では、『2016』がいかに素晴らしい出来だったかと熱く語り合っている記者たちの姿も見られた。
たしかに作品はプロの仕事と言える完成度で、洗練されていて興味深く、説得力があった。興行的にも成功しており、公開された先週末の興行収入ランキングではドキュメンタリー映画としては異例の7位にランクインした。もちろん、保守派の論客たちからは素晴らしい「洞察力」だと絶賛された。
いまや映画のメッセージは保守派だけでなく一般の人々にも浸透しつつある。オバマの支持者が映画の主張を受け入れるとは思えないが、オバマに批判的な人たちにとっては新たな攻撃材料になることだろう。
「2008年の時点では、われわれはオバマを分かっていなかった」と、映画の中では語られている。「今では分かる。2016年のアメリカを支配するのはアメリカンドリームか、オバマ・ドリームか」
2016年には、この映画が保守派の単なる妄想だったのか、真実を描いたものだったのかも明らかになるだろう。
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