――イルカを殺して食べるのはだめで、牛や豚なら殺してもいいというのは人間側の勝手な差別にも思えるが。
私は、自分の道徳観や価値観を人に押し付けようとは思っていない。ただ事実だけを言うと、水銀汚染された牛肉や豚肉、鶏肉、または犬の肉が売られることはない。それは違法な行為だ。
私が日本に来て漁師やジャーナリストと話をすると、彼らは「西対東」あるいは「彼ら対我々」という対立的な議論にもっていこうとする。また、日本のメディアは私をシーシェパードやグリーンピースと同じカテゴリーに押し込めたがるが、それは間違った認識だと言っておきたい。
しかし何より重要なのは、イルカが「肉のため」に殺されていること。人間が食べたり、ペットフードや肥料にするためだが、水銀汚染を考えればこうした使い方はすべて禁止されるべきだ。水銀汚染が確認され、学校給食の利用を止めた段階ですべてのイルカ肉利用が止められるべきだったと思う。これについてはもう議論の余地はない。
これは日本だけでなく世界的な問題だ。私はフロリダ州マイアミに住んでいるが、その近くのイルカも同じように汚染されている。フランスでもカナダでも同じ。この映画が訴えているのは太地町のイルカ漁だけでなく、もっと大きな問題だ。
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■追記:インタビューが行われた6月半ばは、東京、大阪などの映画館で上映中止が決まり、公開が未確定とされていた時期だった。公開が実現した後の7月8日、オバリーに電子メールで聞いた。
――日本での上映中止を求める声が一部で上がったことについて、どう感じたか。
「日本の人々」が映画の上映中止を求めていたのではない。小さな極右団体がそうした要求を行っていた。その団体が日本人を代表しているわけではない。どう見ても彼らには豊富な資金源があるようだが、誰が資金を提供しているのだろうか?
あの極右団体の行動は映画にとって相当の宣伝になったし、しかもそれをただでやってもらった。彼らに感謝している。
――反対活動が起こると予想はしていた?
いや、思ってもみなかった。日本人の多くは礼儀正しく、プロの右翼活動家のように無礼で騒々しくはない。
活動家の粗暴で無礼な手口は、かえって裏目に出たように思える。彼らはもっと大きな論争、日本国憲法第21条で守られている表現の自由、言論の自由をめぐる論争を引き起こした。
――最終的に上映が実現して、どんな気持ちか。
『ザ・コーヴ』は『靖国』(08年のドキュメンタリー映画)とは違う。『ザ・コーヴ』はアカデミー賞受賞作だ。これからもずっと残っていく作品だし、日本での公開も実現した。その事実に私は大きな満足感を覚える。日本の人々がいよいよこの映画を見ることで、すべてがよい方向に変わっていくだろう。
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