マクレガー、『天使と悪魔』を語る
Ewan McGregor on the Vatican, Kilts & His Accent
最新作『天使と悪魔』で聖職者を演じた俳優ユアン・マクレガーが明かす撮影の裏側と映画をめぐる宗教論争、故郷スコットランドへの愛
ユアン・マクレガーは特定のジャンルにはこだわらない俳優だ。ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』ではライトセイバーを振り回し、『トレインスポッティング』では麻薬中毒の若者に、インディーズ映画『ベルベット・ゴールドマイン』ではロック歌手イギー・ポップになりきった。
だから『ダ・ヴィンチ・コード』の続編『天使と悪魔』(ロン・ハワード監督、5月15日全世界同時公開)で黒い法衣をまとって神父を演じても、特段の驚きはない。故郷スコットランドの独立問題や伝統衣装のキルト、そして映画をめぐるカトリック教会の論争について、本誌ニッキー・ゴスティンが聞いた。
――今回の映画はあまりメディアが取り上げず、大きな論争にならなかったが。
物議をかもすような映画じゃないし、そんな要素はない。
――ただカトリック教会は気に入らなかった。
教会は前作『ダ・ヴィンチ・コード』が大嫌いで、それが尾を引いている。今回の映画に、カトリックや教会、信者を挑発するような要素はない。バチカンの裏側を題材にした古いタイプのスリラーだ。バチカンはすごく面白い世界だと思うけど、あまり世間に知られていない。
――あなたはカトリック?
いや、違う。
――だから腹は立たなかった。
何かの宗教に反対するような映画にはかかわらない。そういうことには興味がない。この映画の宗教問題についてどう思うか質問されるけど、逆にそれが何なのか誰かに教えて欲しい。
――腐敗した神父が登場するから論争を呼んでいるのでは?
それが論争になるって? 腐敗した神父は最後に当然の報いを受けて、教会の他の人たちは明らかにそんな彼らに対峙している。教会全体が腐敗に寛容なわけじゃない。そこは論争にならないだろう。
――役柄のリサーチはした?
ある程度は。もちろんバチカンは門戸を開いて裏側を見せてはくれない。だからドキュメンタリーで勉強しなければならなかったが、これが退屈だった。バチカンのドキュメンタリーを寝ないで全部見るのは結構難しい。大して役には立たなかった。
でも1人のニュージャージー出身の神父が宗教儀式を演じる際のアドバイザーになってくれて、とても頼りになった。教会やバチカンのこと、それに宗教界の序列に関しても教わった。
――その衣装を着るのは楽しい? 何と言うか、ドレスじゃないよね?
カソック(聖職者が着る足まで達する法衣)だ。面白い制服だよ。着ているとステイタスが上がってみんなの扱いが違ってくる。
――キルトみたいなもの? 下着ははく?
(笑)下にズボンをはく。人生を信仰に捧げた人の制服だから、とても重みがある。この前バチカンの広場で、カソックを着ている人が歩いてきたら、歩き回っていた旅行者がさっと道を空けた。これを着る者にはとても敬意が払われている。
――映画の出演で宗教や精神世界への関心が高まった?
そうでもない。信仰に身を捧げる人物を演じたけど、自分の宗教心は変わらない。
――トム・ハンクスとロン・ハワードは長期にわたって一緒に仕事をしている。疎外感はなかった? いじめは?
(笑)いや。2人は良い関係だよ。親友同士だ。今まで4~5本の映画を一緒にやっているんじゃないかな。
――よそ者扱いされなかった?
全然。2人は俳優全員がやりやすいように気を配ってくれた。現場の雰囲気は良かったよ。
――これまでの出演作でどれが一番気に入っている?
1つは選べない。どの映画も特別だし、それぞれが前作とは違う。ティム・バートンやロン・ハワード、ロマン・ポランスキー、ウディ・アレンといった本当に好きな人たちと仕事をしてきた。
――(スコットランドの)訛りを隠すのは簡単?
いや。他の訛りでごまかすだけだよ。
――他の訛りでしゃべるのは難しい?
色々だけど、ある程度の練習は必要だ。ただ撮影が始まったら、自分のアクセントが役柄のアクセントだと信じて演じないといけない。
――『トレインスポッティング』や『スター・ウォーズ』、そして今回の『天使と悪魔』と話題作への出演が続いたが。
3作だけ? 僕は他にもたくさん映画に出ているよ。
――とても有名な作品に3つも出演しているのは素晴らしい、と思っただけなんだけど。
僕はそうは思わない。役柄を演じて物語を伝えるのが僕の仕事であり、成功したかどうかは重要じゃない。
――ショーン・コネリーのように故郷スコットランドの独立運動に関わっている?
いや。「グレート・ブリテン」でいい。(イギリスの)国家連合はとてもうまく行っているといつも思っているから、運動には関わっていない。
――(スコットランドの伝統衣装でスカートに似た)キルトは着る?
もちろん。結婚式のような特別な機会に。タキシードみたいなものだ。
――靴下にナイフも入れる?
それは「ダーク」。キルトを着るときには絶対身に着ける。腕にダークの刺青も入れている。