健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
REDUCING DEMENTIA BY 45%

認知症のリスク要因に対処することは高齢者の生活の質の向上にもつながる HALFPOINT IMAGES/GETTY IMAGES
<「予防こそが重要」対処すれば遅らせたり完全に防ぐなど、認知症罹患率を45%低減できる。健康に長生きするために気を付けるべきこと>
認知症の半数近くのケースが、視力低下や高コレステロールなど14のリスク要因に対処することで、発症を遅らせたり完全に防ぐことができる可能性があることが、英医学誌「ランセット」に掲載された研究報告で明らかになった。
ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのギル・リビングストン教授(精神医学)の指導の下、内科医、社会学者、治療科学者ら国際的に認められた認知症専門家で構成された研究チームは、認知症の予防・治療・ケアについてさまざまな過去の研究報告データを検証した。
認知症は急速に世界的な社会問題となっており、現在世界の推計患者数は2019年で5700万人。その数は50年までに1億5300万人に増える見込みだ。
高所得国の罹患率は減少傾向にあるが、中所得、低所得の国々では増加傾向が続いている。そんななかでこの研究は良いニュースと強いメッセージを発信している。
政策決定者、医師、個人、家族は予防措置と認知症リスクの軽減に希望を持つことができる。そして患者と介護者は、研究で立証されたアプローチによって生活の質の向上に取り組める。
生涯にわたっての予防策今回の研究は、既に特定されている12のリスク要因に加え、視力低下と高いLDL(悪玉)コレステロール値という、2つのリスク要因に関する証拠を提示した。
これら14のリスク要因に対処すれば、世界の認知症罹患率を45%低下させることができる可能性がある。
認知症罹患率の高さや健康格差、リスク要因を考慮すると、低所得国や低所得層で、より大幅なリスク低減が期待できる。
リスク要因に対処すると、高齢者の健康寿命を延ばし、認知症患者の体調不良期間を短縮することにつながる。さらに、興味や能力に応じた活動による非薬物療法で、症状を緩和し、生活の質を向上させる臨床試験の結果にも言及している。
今回の研究では、幼少期から中高年までの生涯にわたる、14のリスク要因に対処するプログラムを提案した。
■幼少期の一般教育の改善。
■中年期では、聴力低下、高コレステロール、鬱病、外傷性脳損傷、運動不足、糖尿病、
喫煙、高血圧、肥満、過度の飲酒への対処。
■老年期では、社会的孤立、大気汚染、視力低下の低減。
多くの新たな研究によって、大気汚染のような上記のリスク要因に対処することで、認知機能が改善し、認知症リスクが低減される可能性があることが示されている。
また高所得国でも、認知症リスクを低減させることで健康寿命を延ばし、認知症の発症を遅らせ、認知症患者の不健康な期間を短くすることができることが分かった。
世界の認知症罹患率が45%低減できるという期待は、リスク要因が排除できるということが前提だ。認知症予防がいかに重要かを示している。
今回の研究は、医師や高齢者福祉の新たなガイドラインとなり得るものだ。
Eric B. Larson, Affiliate Professor of Medicine, UW School of Medicine, University of Washington and Laura Gitlin, Dean Emerita and Distinguished Professor of Nursing and Health, Drexel University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
【参考文献】
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