休肝日は肝臓の健康には意味がない!? 専門医に学ぶ「リスクの高い酒」「アルコールを解毒するつまみ」
毒の処理能力は生まれながら決まっている
遺伝で決まっているのは、アセトアルデヒドを代謝する「アセトアルデヒド脱水素酵素」の働きです。この酵素が強い人と弱い人がいるわけです。
お酒に強いタイプなのか、弱いタイプなのかは生まれつきの体質で決まっているので、体質改善でお酒に強くなることはありません。「飲む機会が増えて、ずいぶんお酒に強くなったよ」と言う人もいますが、根本的な体質が変わったわけではありません。
その一方で、肝臓の一般的な解毒作用でもアルコールやアセトアルデヒドは分解されます。こちらの解毒作用は、飲んでいれば多少は鍛えることができます。「そこそこは飲める」中間タイプの人が「お酒に強くなる」ことはあり得るわけです。
ただし、もともと下戸(げこ)の人は、それも鍛えることはできません。
「お酒に強い=肝臓が丈夫」はウソ
ところで、ここが大切なポイントですが、「お酒に強い人」「そこそこ飲める人」=「肝臓が丈夫な人」というわけではありません。お酒が強い人でも大酒を飲み続けていれば、アルコール性肝障害や肝硬変になる可能性はあります。
肝機能を下げないために、どのタイプの人も「適量」を、それも時間をかけて飲みましょう。
では、「適量」とはどのぐらいの量でしょうか。厚生労働省は「一日20g(純アルコール換算)」を適量としています。これは、ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、ワインなら2~3杯に相当します。
ただし、適量には個人差があります。アルコールやアセトアルデヒドの分解能力に個人差があるからです。また、男性のほうが女性よりもアルコールに強いとされています。女性のほうがアルコールによるリスクが高いということです。
「1時間で処理できるアルコールは体重1kgで0.1g」ともいわれます。ただし、これはあくまでも目安です。また、現在の体重ではなく「適正体重」で計算しなければいけません。体重が90kgの人でも、適正体重が60kgなら、60kgで考えるということです。
なぜ体重がひとつの目安になるかといえば、「肝臓の大きさ」が処理能力に関係があるからです。ただし、肝臓が大きい人のほうが処理能力も高いことは事実ですが、アルコールを代謝する酵素がどれくらい活発に働いているかでも違ってきます。
休肝日は必要ない
なお、男性のほうが女性よりアルコールに強いとされているのは、一般的に女性よりも骨格や体格が大きくて体重もあるからともいえますが、性ホルモンの影響もあるようです。
アルコールの処理能力は本当にかなりの差があります。「二日酔いしない」「気分が悪くならない」「悪酔いしない」ことを適量のひとつの目安にしてください。
「週に1日は休肝日をとりましょう」と聞いたことがあるかもしれません。そうかと思うと、「週に2日は休肝日を」と説く本や、「休肝日なんていらない」と主張する専門家もいます。
いったい、何が正しいのでしょうか。
実は、大事なのは「総量」です。たくさん飲む人なら、ときには飲まない日を設けるほうがいいでしょうし、いつも少ししか飲まない人には休肝日がいらないかもしれません。
大酒を飲む人に必要なのは、肝臓を「休ませる」ことではありません。必要なのは、お酒の「総量規制」です。