最新記事

パックンのお笑い国際情勢入門

「日本のお笑いって変なの?」をパックンが外国人3人と激論しました

NOT STANDUP, SIT DOWN COMEDY CHAT

2019年8月5日(月)18時05分
ニューズウィーク日本版編集部

(左から)パックン、周来友、チャド・マレーン、ナジーブ・エルカシュ ILLUSTRATION BY KAZUSHIGE AKITA FOR NEWSWEEK JAPAN

<外国と日本のユーモアはどう違うのか。なぜ日本には政治ネタのお笑いがないのか。パックン、周来友、チャド・マレーン、ナジーブ・エルカシュの4人で「研究」した>

8月6日発売のニューズウィーク日本版「パックンのお笑い国際情勢入門」特集(8月13&20日号)で、「世界の政治を題材に日本の読者を笑わせる」という難題に挑んだパックン(パトリック・ハーラン)は、6月下旬のある夜、取材の一環として、3人の在日外国人を都内某所に呼び集めた。

中国人のジャーナリストで実業家、タレントでもある周来友(しゅう・らいゆう)さん(56)。吉本興業所属のお笑い芸人で、『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)の著書もあるオーストラリア出身のチャド・マレーンさん(39)。そして、ダジャレ好きなシリア人ジャーナリスト、ナジーブ・エルカシュさん(45)。いずれも日本のお笑いをよく知る異文化理解のエキスパートたちだ。

外国と日本のユーモアはどう違うのか。その違いの背後には何があるのか。なぜ日本には政治をネタにしたお笑いがないのか。『笑点』の大喜利よろしくパックンが司会を務め、各人にお題を振る。時に得意のジョークが飛び交い、時にディベートの様相を呈し、時に下ネタに走る4人。
2019081320issue_cover200.jpg
日本ではお笑い芸人の政治的発言が問題視されがちだが、なぜダメなのか、むしろ不健全じゃないのか――。本誌特集では、ハーバード大卒のお笑い芸人であるパックンが、お笑い文化をマジメに研究し、日本人が知らなかった政治の見方をお届けする。また、パックンによる笑える「危険人物」解説も収録している。

3時間近くに及んだ「外国人座談会」は特集にも収録しているが、ここでは拡大版を前後編に分けて掲載(この記事は前編)。脱線し過ぎた箇所と放送禁止部分を取り除き、濃密な1万5000字に凝縮しました。どうぞお楽しみください。

※座談会・後編:日本人は「政治に興味ない」「専門的に生きている」──外国人のお笑い座談会より

(※一部の読者が不快に感じるおそれのある刺激的な表現を含みます)

◇ ◇ ◇

パックン 日本に来て、お笑いに関して予想と違ったと思ったことは何かある?

 日本のお笑いは、ただのお笑いですね。

チャド トゲのある言い方するね!

パックン ここに日本のお笑い芸人が2人いますからね。

 中国だとお笑いから何かを学ぼうとする。日本では、ただばかなまねをしてればいい。

パックン いきなり深い話になりましたね。でもいいですよ、後で浅くするから。お笑いから学ぶって、例えば?

 例えば、アンジャッシュっていう芸人がいた。

(一同爆笑)

パックン まだいます。現在形にしてください。

 アンジャッシュの泥棒がテーマのコントがあって、それを中国人が丸ごとパクっちゃった。

パックン え? 中国人ってパクったりするの?

(一同爆笑)

 パクるよー!

パックン 初耳だ。

 日本だってアメリカだって、昔はパクってたでしょ。

パックン まあまあまあ。お笑いはみんなで共有するもの。

 そのネタをテレビ番組でやって、評判もよかった。どこが違ったかというと、泥棒が最後に「天に誓ってもう悪いことはしません」と言う。そうするとみんなが笑うんですよ。

パックン へぇ。道徳的だ。

 日本だと最後にそんなこと言うと白けてしまうよね。

パックン アメリカに置き換えると、教会の儀式で使うワインを盗んで、もう2度とやりませんと誓った後に神父さんの聖書を持って帰る、みたいな。少なくとも、癖になっているというオチがないと笑えない。

この間、金正恩(キム・ジョンウン)のモノマネで有名なハワードXに会って、香港にはモノマネがないと聞いたんですが、本当ですか。

 モノマネ、中国にもありますよ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中